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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

御菓子司 三陽【武蔵小金井@中央本線】

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豆大福(つぶ):140円


世間的に武蔵小金井の「御菓子司 三陽」は「麩まんじゅう」が有名である。

だがしかし「御菓子司 三陽」には「豆大福」もある。
それも大変しっかりした風体をした「豆大福」がある。
だけど1月と8月は販売休止しちゃう「豆大福」である。

そんな「御菓子司 三陽」の「豆大福」は透明のビニール袋に入れられていて、
朝からドンドンと地響きがする店の商品棚の下の段に、
そのビニール袋の中にあってもゴロリと丸っこい風体で居た。
全体を疎らに散って点在する豆の影は結構多めで、
こんもりとした佇まいに陰影の強弱を付けながら潜んでいるが、
所々で墨滴でも落としたような鮮やかな黒さもかなり目立つ。

早速封を開けてスルリと手に滑り出てきた、
意外に大きな「豆大福」を手に取ると結構ズシリとしていて、
その存在感に歓喜する心を見透かして、
ズルリとずれて流動する様な感覚で沈み込み、
指先を取る「豆大福」の策略にまんまと嵌り、
このまま中の餡ごとボトリと落ちて行きそうな焦りの後、
ズイと餅は動きを止めると自然に安定の位置を保持し収まる。

それは豆の周囲にまぶされた片栗粉が露わに描き出す、
餅表面を流動的に走る皺の挙動範囲であり、
この「豆大福」を取り巻く餅の形成された過程を刻み込んだ、
云わば「豆大福」の地殻プレートが移動して出来た路であり、
この「御菓子司 三陽」が造り賜ふた「豆大福」創生の記憶である。

確か金星ってこんな地表してなかったかな?
そんな壮大な事を考えながら、
宇宙に浮かぶに「御菓子司 三陽」の「豆大福」を想像して、
直径約55㎜程度の小惑星的「豆大福」に齧り付く。

その「豆大福」を丸のまま齧り付けば、
唇から零れ落ちる片栗粉が白い軌跡を描きながら膝に吸い込まれる。
表層はそれ程と思っていた片栗粉の団体様御一行が、
大量に「豆大福」底面からボタボタ落ちる。
その光景を呆然と眺める脳内にフニフニとした食感が伝わり始め、
柔らかできめの細かい餅が瑞々しさを保ったまま、
柔軟なコシを発揮してトロンと伸びやがてプチンと千切れる。
そして千切れた状態のままデロンと垂れて特に引き戻されることも無く、
なすがままの状態で噛み口を晒している。
それを見る限りは比較的均等な厚さを保った餅であり、
噛み口に光る輝きに朝の店舗に響く餅を突く杵の衝撃が甦る。

そんなふんわりとした優しい塩気の餅に込められ、
口に含めばボコボコとした感触でその存在を誇示していた赤エンドウ豆が、
餅と共に噛み砕かれた瞬間に満を持してその主張を開始する。
何の気なしに餅ごとグシグシ噛み砕いた豆から発する確かな塩気と、
今まで体験した事の無い風味が口一杯に充満する。
この味の方向は“和菓子”というよりは“和食”の範疇ではないだろうか。
それ位にもう一味加わった風なかつて無い複雑な風味の赤エンドウ豆であり、
尚且つ豆自体が結構大き目なのでその存在感に一層拍車が掛かる。

その独特の個性を発揮する赤エンドウ豆を飲み込む様に粒餡が押し寄せる。
サラサラとした舌触りとアズキの皮の尖がった引っ掛かりのバランスと、
最初は控えめな甘さと思わせて後からジンワリとその本来の能力を発揮して、
一気に口内に甘味の波を浸透させていくポテンシャルの妙。
そしてそれをボンヤリ堪能しているとスーっと引いていく去り際の鮮やかさ。

柔らかな餅と滑らかな粒餡の間で、
燦然と光り輝く超個性的な赤エンドウ豆の風味が、
一風変わったアクセントとなり「豆大福」で弾ける。
「御菓子司 三陽」の大看板「麩まんじゅう」の傍に寄り添いつつ、
定番の商品でありながら各1か月の冬休みと夏休みを設けるスケジュールが、
その存在によりその秘匿性を増していく。
とはいえそりゃ「いちご大福」や「生チョコ餅」と並べりゃ地味だわなと、
その普遍性ゆえの宿命に同情もする「御菓子司 三陽」の「豆大福」であるが、
あの赤エンドウ豆の正体を探る目的の為にまた訪れる事になるだろう。




御菓子司 三陽
東京都小金井市本町2-9-10
9:00~20:00位
月曜 定休
北口を出てロータリーを越え小金井街道を進んだ二つ目の交差点を右折後少々進んだ角地。徒歩約5分。