首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

大久保だんご【白金高輪@東京メトロ南北線 都営地下鉄三田線】

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豆大福(つぶあん):100円


白金北里通り商店会の「大久保だんご」の店頭に並ぶ「豆大福」は、
直径約60㎜まで“団子”の一粒を拡大した様にも見える。
とはいえ団子屋に限らず大抵の和菓子屋が作る「豆大福」というモノは、
こんもり丸く団子をそのまま大きくした様な形ではある。
ちなみにコチラ「大久保だんご」の「だんご」類は錠剤を大きくしたような形である。
そんな「大久保だんご」の団子の様にまあるい「豆大福」は、
餅の表面に沢山の赤エンドウ豆をふんだんに散らし、
ソイツらが埋まっていたり飛び出ていたりと色々な仕様で配されている。

早速に透明のビニール袋に入れられた「豆大福」を手に取って、
少々ぞんざいに袋から追い立てる様に取り出すが、
荒事にも微塵も崩れたり拉げたりする事無くコロコロと手の平に収まる。
そのしっかりとした強いフォルムを物語る様に摘まんだ指には、
ソレを押し返す抵抗力がビンビンと伝わりそして以外に軽め。
この強固なハリを前面に押す餅と当然中に存在する餡の比重が、
一体如何程のバランスで成り立っているのか見当が付きにくい。
しばらく推察した後に強靭な餅のハリと表面を覆う片栗粉のサラサラとした感触を堪能後、
いまだに微塵も変容しない「大久保だんご」の「豆大福」に齧り付く。

ムニュっとそのハリの割に意外に容易く潰れた本体に虚を突かれつつ、
早速食べ進めようとすると行く手を阻むのはやはり餅。
鋭利な前歯の侵攻に毅然と対抗する強靭なハリとコシはさすがの鉄壁さ。
噛み口を見れば全体的にさほど厚みは無いが逆にこのハリとコシに驚かされ、
必然的に餅に厚みが生まれてしまう底面部分に至ってはもはや、
肉食獣が獲物に喰らい付くが如く喰い千切って行くハメになる。
この様に剛の佇まいを醸し出す餅なので当然水気は少ないが、
それなりに潤いはあって断面はキラキラと光りを反射して輝いている。
そんな純然たる“餅”が強靭なボディで中の餡をしっかり包囲していたが、
しかしそれもほんの束の間で顎の繰り出す圧力により内圧から側面が決壊し、
ソコから次々に餅は破綻してやがて咀嚼の波に翻弄され次第に柔らかく変容する。

その決壊した所からはニュルリニュルリと粘り気が強く密度も高い粒餡が、
怒涛の勢いで押し寄せて口内をネットリとした甘さに染めて行く。
粘度が高く甘味もアズキのコクも粒餡としての風味も大層濃厚な粒餡で、
その色味もまた深い小豆色でその中にあって皮の光沢だけが異質な輝きを放っている。
モッタリとした口当たりで舌の上に乗っかり、
ソコを拠点にしてジワリジワリと口内をアズキ要素で染め上げて行く。
久方ぶりに遭遇する大層我の強い粒餡に記憶が揺り動かされ、
コチラとしてもベタな甘さは大歓迎なので舌先で思う存分邂逅を楽しむ。
するとそのネットリとした甘味と舌触りが満ちた空間の狭間を縫う様に現れた丸い物体が、
たちまちの内に寄り集まって口内の片隅に留まって、
餅の咀嚼に忙しい奥歯が打ち合うど真ん中へ次々に飛び込んでくる。

硬めの赤エンドウ豆が臼歯の溝にカッチリと収まった途端に噛み砕かれると、
爆発する塩気の衝撃波とともに濃い赤エンドウ豆の風味が強烈に口内を打ち付ける。
茹で栗の様な甘さ香りと赤エンドウ豆の本来持つコクと青臭さが、
絶妙に混ざり合い図らずも疑似的に木本の種子と草本の種子との競演を体感する。
そうなると口内は一瞬にして赤エンドウ豆の風味が猛威を振るい、
今までゆったりと濃密に染め上げてきた粒餡の甘い世界を
塩気の利いたマイルドな帳を下ろし始め口内の雰囲気を刷新する。

強靭な餅と粘りのある粒餡に加えて硬く濃厚な芳香を持つ赤エンドウ豆の三つ巴は、
それぞれの置かれた立場と担う役割をしっかりと果たして、
この「大久保だんご」の「豆大福」が造り出す小さな世界を、
優美にして大変安価に構築しているのである。



大久保だんご
東京都港区白金6-4-4
9:00~18:00
日曜・祝祭日 定休
3番出口から右へ進み突き当たりを左。直ぐ現れる十字路を渡り都道305線に沿って右へ行った先。約11分。