首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

和菓子処ならは 農工大通り店【武蔵小金井@中央本線】

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豆大福(こしあん):150円


直径およそ52㎜の美しい楕円体を形作る、
武蔵小金井「和菓子処 ならは 農工大通り店」の「豆大福」は、
つるんと弧を描く餅の表面に海洋に浮かぶ島々の様に赤エンドウ豆を配し、
その周囲にフカフカした触感をした片栗粉の雲が立ちこめている。
パリッとしたビニール袋に入れられていてもその形を保つ餅のハリは、
摘まんだ指先の跡を少しこしらえただけで優しく受け止めて、
逆に自身のストンとした重さを指先に掛けて来て下へ下へとゆっくり下降し出す。
急いで持ち上げてフワフワした片栗粉がハラハラ舞う中、
真正面からパクリと「豆大福」に齧り付く。

真っ先に舌に伝わる片栗粉のフワフワとした柔らかな感触と、
その下隠れた餅から既に発っしている強い塩気。
以外に主張の強い餅を噛み千切ろうとするも、
歯は餅の中に瞬く間に取り込まれ、
干潟の泥に脚を突っ込んだ様に成す総べなく埋まっていく。
ソコから脱却しようと更に顎に力を入れていくと、
今度は歯を立てた個所から湧き出すように次々と、
口内にトプトプと流れて来る様に溢れ出す甘く滑らかな清流。
ゆるゆると湧き出る甘い泉の呪縛から逃れる為一気に噛み千切ると、
改めて眺めてみると少々黄色味が掛かっていて、
断面に潤いの光沢が層を作りイルミネーションの様に輝く。
そして何よりその分厚さが餅本来のコシに更なる拍車を掛けていて、
顎に跳ね返ってくる弾力も相当なモノである。
ソコにシッカリとした塩気が舌先から喉の奥に至るまで染み渡り、
その後口内を豊かな米の香りで包まれる。
そうなって来るともう口内は塩むすびを頬張った様な、
素朴な雰囲気で包まれ僅かの合間ノスタルジックな面持ちとなる。

そんな素朴な力強さを持つ餅に包まれるのは淡い色合いの漉し餡。
滑らかでサラサラの食感を保持したまま口内で薄く伸びて、
液体が流れる様にスルスルと喉を越えて行く。
ソコに至るまで甘味は何時までも淡く優しいままで、
込められたアズキの風味は甘味に寄り添う様に仄かで儚い。

しかしその風味を堪能する暇も与えぬ様に、
次々歯にぶつかって来るのは固く丸い一団が現れる。
その丸い物体は結構硬めに仕上がっていて、
奥歯で以て一気に噛み砕いてみるとガリッといった食感と共に、
シックな味わいがジンワリと広がり舌先に染み入る。
そしてこの硬い赤エンドウ豆を粗方砕き終える頃になると、
舌の表面にほんのりとした塩気をかぶせて来て、
その塩気が今までの赤エンドウ豆のコクを更に引き立てて行く。

ココまでの怒涛の三連続攻勢せ口は柔らかさで満たされ、
滑らかな舌触との競演が繰り返えされる。
分厚い餅の歯応えが加速させるコシと、
潤滑油の様にサラリと流れる漉し餡が絡み合う傍から、
やおら割って入ってくるゴロゴロと転がり続ける赤エンドウ豆の軍団。
この量は「豆大福」の見た目から容易に想像出来たが、
内に秘められた赤エンドウ豆の量もまたハンパでは無かった様である。
想像を超えたゴロゴロが口内を転がり流転を続け、
一層の存在感を発揮して咀嚼の度に顔を出しては、
途端に噛み砕け濃厚な香りを放って行く。

方や餅は餅でブ二ブニと口内で何時までも跳ね回っているかと思えば、
砕けた赤エンドウ豆を絡み取り喉の奥底へ誘って行く。
そんな事が繰り返される口内に於いて、
漉し餡は何時までも淡く儚げな甘味を纏い清く澄んだ香りを残していく。

強いコシの餅に守られた淡い漉し餡を擁した「和菓子処 ならは」の「豆大福」は、
10月中旬~5月末まで販売の期間限定商品であるのだが食べてみてその訳が納得できる。
こんな淡い「豆大福」は夏の炎天下では溶けて消えてしまいそうで、
そう思うとこの黒い斑の白い球が冷たく感じられてくるの覚え、
ナルホドこれが“共感覚”と云う奴かと独り言ちるてみるのである。



和菓子処ならは 農工大通り店
東京都小金井市本町1丁目10-5
10:00~19:00
火曜 定休
北口から小金井街道を渡り府中方面へ進んだ最初の十字路を左へ進んだ小金井太陽病院の向かい。