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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

御菓子司 大和や【久我山@京王井の頭線】

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豆大福(つぶあん):115円


雪山の様に片栗粉を頂上付近に積もらせた「御菓子司 大和や」の「豆大福」が、
白い氷の山肌からツンツンと赤エンドウ豆を突出させて足場を形成する。
そんな風に片栗粉が毛羽立つ表面を眺めなが約50㎜程の小山に、
風雪が叩きつける冬の氷壁を投影してみると、
実際登るには片栗粉でツルツルいきそうで危険極まりない壁面で、
あまりボルタリングにはおすすめ出来そうも無い。

そんな小振りな雪山的「豆大福」を手に取ってみると、
餅の表面はフニャリと柔らかくツルリとした指触りが伝わる。
接した指先はゆっくり静かに沈んで内に潜む餡に到達すると、
ソコからほんの少しの距離を自然落下した後にシックリと落ち着く。
指の周りに同心円のシワを形成して完全停止した後、
途端に片栗粉越しの指先には冷気が伝わり始める。
いくら時候的にも冷えがちとはいえ少々冷え込み過ぎな「豆大福」の、
周りをグルリと眺めてみると底面部付近に餅のうねりが見て取れる。
入り組んだ餅は片栗粉の影響を受け癒着せず、
雪氷に走るクレパスの様な溝を形成して底部奥深くに入り込み、
押し固められた片栗粉の奥深くへ隠される。

意外にラフな綴じ代を持つ「豆大福」に早速齧り付いてみると、
バフッと舞い散る片栗粉が膝に落ちる。
先ずは真っ先に対面する餅は口の中に入った途端に、
口内に伝わる冷気とクニクニを超越した食感を伝播する。
全体的に薄く纏った餅はプルプルとした歯応えで、
ハリは多少弱めだがコシは強情な位に強い。
クイッと引っ張ってみると僅かに伸びるだけで直ぐにプチンと千切れて、
挙句反発も少なく僅かに引き戻っただけで後はそのままクタッと垂れ下がる。
水気をタップリと含んだプリプリした食感が伝わるが、
それも一瞬で終えると直ぐに口内の水分と融和してしまう。
噛み口を見ると餅のキメは驚くほど細かく、
湛える水分量も一般的な餅とは明らかに差があり、
餅を取り巻くただ事ではない透明度がその事を雄弁に物語る。
一瞬で混ざり合いその存在を跡形も無く液状化してしまい、
今やその存在を窺えるのは微かに香る独特な風味だけである。

余りの潔い餅の退場劇に呆気に取られているうちに口内に次の主役が現れる。
淡雪の如く消え失せた餅に変わり口内の主役を張るのは、
順番的にも物量から行っても必然的に粒餡となるの。
サッパリとした甘さを豊潤なアズキの風味が縦横無尽に広がる。
滑らかな舌触りではあるがさほど水分を感じさず、
アズキの種皮が口内に伝える主張も細かく舌に残留して行く事も無い。
そんな滑らかで優しい食感の粒餡の中にあるからこそ、
赤エンドウ豆が発する硬い感触は殊更目立つ。

そんな口内の追跡調査に勤しんでいる内に、
栄華を誇った餡の方も初期形状から変容を遂げて液化の波に飲まれ融和を果たし、
その内にコロコロした感触をはらんだまま咀嚼の渦に巻き込まれていく。
しかし一旦噛み潰してみるとこの赤エンドウ豆の仕上がりは柔らかで、
グシグシと種皮も中身も簡単に潰れしかも細かく崩壊してしまう。
やがてこのかなりサッパリとしつつも力強い風味を持った赤エンドウ豆は、
茶色い芳香を発して拡散するとアズキの風味に追走して芳香を振りまき口内を駆け抜ける。
そして己の能力を如何無く発揮した後は一切の痕跡を残す事も無く、
再び粒餡にきれいサッパリ取り込まれ一体化して融合していく。

まるでバタークリームの様に柔らかな「御菓子司 大和や」の「豆大福」は、
口に入れていく傍から淡雪の様に滑らかに蕩けていってしまう。
その食べ応えをじっくり堪能していると、
人間が築き上げる創意と工夫の奥深さを垣間見る事が出来る。
そんな直ぐに消え失せる英知の結晶を探す為に、
二個目の「豆大福」に手を伸ばしクニクニとまた食べ始めるのである。



御菓子司 大和や
東京都杉並区久我山3-23-16
10:00~20:00
木曜 定休
南口から出てすぐの信号を渡ったコンビニ向かって左の道を進んだ先。既に南口から看板が見える。