首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

松月堂【調布@京王線】

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豆大福(つぶあん):123円


松月堂」の「豆大福」はパンッと張りのある約56㎜で、
この「豆大福」もまた少々の荒事には動じない強靭なハリを表層に湛えている。
店頭に並んでいるその第一印象は文字通り“つくりもの”の様に丸く、
洋菓子でいう所の“ブール・ド・ネージュ”の大きいヤツといった印象である。
そしてその外見は表面を覆う餅にギュッと赤エンドウ豆を押し込んで、
埋没させたような感じで大概が表層部分に納まっている感じである。
そしてその赤エンドウ豆が飛び出て来ない様に、
表面をペインティングナイフで塗り付けた様な白い片栗粉が分厚く覆い、
その表層には指紋の様な文様を作り出し縄文土器の様な佇まいを醸し出す。
その原始の鼓動を感じる「豆大福」をパリパリとビニール袋かた取り出す時、
今だ分厚く塗り込められた片栗粉越しに摘まんだ餅の表面は、
プリッとした優しい感触を保ちで指から掛かる外圧をジンワリと受け止める。
すると指はすぐにピタリと侵攻を遮られその指先に深く柔らかな感触が伝わる。
そんな底知れない深い包容力を持った「豆大福」に一口齧り付く。

口に含んだ途端に片栗粉がキュッキュッと音を発てて鳴り出し口内に貼り付き、
その後にマシュマロの様な柔らかな感触が口内を内側からペッタリと密着して覆う。
全体的に厚めでキメが細かく小さな光沢が密集してキラキラ輝く断面の餅は、
ツルリとした口当たりで片栗粉の助力もあってか、
抵抗が無くかなりツルツルと舌の上を流れて行く様な滑らかな仕上がり。
スーッと伸びて程よくプチンと千切れた後はフルフルと震えるコシもあり、
噛むと文字通りモチモチとした弾力があり、
チックチックと奥歯で弾む度にジンワリとした甘味がにじみ出て来る。
ソコにこの柔らかさを作り出すモノの正体を垣間見た気になるが、
そんな事を考えている合間に餅を浸食して打ち破ってきた粒餡が、
滑らかでサラサラした舌触りと優しい甘さを引き連れて、
ホロホロと砂の様に次々に舌の上にこぼれ出て来る。

濃厚なアズキの風味と共にアズキの皮のシャキシャキとした歯応えと、
その皮が内包していた中身のサラサラとした滑らかな舌触りが、
粘度低めの粒餡に於いて両者の明確なコントラストを生む。
抑えた甘さと濃厚な風味も相まって粒餡としては余す所の無い、
捕食側に隙を与えない見事な食感に後押しを受け更に咀嚼を始める。
その間餅はというとその咀嚼の度に己自身からほんのり甘い風味を漂わせ、
その都度口内の水分と融合を果たしトロトロに蕩け始める。
皮はシャキシャキとした歯応えを維持したままだが、
ソコに時折独特の風味が漂うのを察知する。
今は素知らぬ顔でコチラの攻勢に反攻をしているかのように思えたが、
しかしこのシャキシャキには強力な助っ人が存在していた。

粗方餅が溶解を果たすとソコから赤エンドウ豆の集団が露わとなる。
身を隠す場所を失った丸裸の残党には最早抗う術は無く、
次々に奥歯に拿捕されことごとくプチリプチリと噛み潰されていく。
なるほどコイツがシャキシャキに厚みを加えていた訳かと更に噛み潰せば、
一瞬ソコから放たれた赤エンドウ豆の持つ個性的な風味が、
甘味で一杯に満たされた空間でアクセントとなり、
やがてそれも甘味の空間に飲み込まれて消えて行く。
その煌めきが全体的にほんのり甘めに感じる「松月堂」の「豆大福」に、
更に一層の奥深さを感じてしまうのである。

もしやこの滑らかさの大半は表面を覆う大量の片栗粉の成せる業なのかと、
試しに片栗粉を粗方はたいて食べてみたが、
最初の口内で立てるキュッキュッという音が無いだけで、
それ以降の印象に別段の変化はなかった。
そうなって来ると逆にあの片栗粉の量は一体なんなのだと言う事になるが、
それはそれでまた別の話である。



松月堂 本店
東京都調布市小島町1-34-8
9:30~18:30
日曜 定休
広場口から北口側の旧線路脇の道を西調布方面へ。調布銀座ゆうゆうロードに入ってクランクの左手。