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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

あんや【成城学園前@小田急小田原線】

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豆大福(こし餡):210円


表面を覆う片栗粉がまるで白い漆喰を塗り固められた様で、
そこに斑な濃淡を描き出す様はさながら流氷が覆う冬のオホーツク海の情景である。
そんな「あんや」の「豆大福」は約58㎜の半球体であり、
下部がキュッと少々絞られた様な佇まいのクビレを持った「豆大福」だった。
そして厳冬の海原の様な片栗粉の下には乳灰色の餅をぐるりとまとい、
そこに点々と幾つも魚群の影を潜ませた様な赤エンドウ豆が、
僅かな凹凸を見せながらも静かに沈んでいる。

手に取ってみると先ず指先に触れる片栗粉の感触は、
細かく起毛したコットンの様な繊細な滑らかさがある。
それは片栗粉に触れた時に指の腹が押し退けるあのザクッとした感触では無く、
触れた途端に溶けて消え失せたみたいに僅かな抵抗も無い。
そのマボロシの様な片栗粉の下に覆い隠された餅もまた上等に柔らかで繊細で、
柔軟な餅の表面が指先を静かに受け止める。
そしてその柔らかさは「豆大福」の底面で極限に達し盟友である片栗粉を融解し、
強力な粘着力を発揮して接地したモノたち冬の海さながら全てを取り込もうとする。
その窮地から逃れるために早速一口横っ腹に噛み付いてみる。

大した抵抗を見せないまま口内に納まった「豆大福」をモギュモギュと咀嚼し始めると、
ココで「豆大福」の表面を覆っていた片栗粉のアノ極上の滑らかさが口内を覆い尽くす。
ソコに餅が覆いかぶさると口内の圧によって設置面に溜まっていた空気が押し出され、
僅かな時間ではあるが真空状態になって口内に隙間なく貼り付いてくる。
その強いコシと弾力と更には粘りも生み出した餅の断面からは、
瑞々しく断面を潤す水気が光沢を放ち輝いている。
その驚異の粘りは多少千切られても直ぐにお互いが吸着して一体化する、
自己修復機能を備えているとしか思えない程である。
それを躍起になって噛み千切ろうとするとそこからは米の香りが漂ってくるという、
如何様に手を打っても全力で餅である事を維持している崇高さがある。
時折口内のアチラコチラで赤エンドウ豆がコツコツとノックを繰り返すが、
至る所に塗布された片栗粉と云取る所を覆う餅によって無力化される。

やがて「豆大福」に内包されている漉し餡がついに解放され、
柔軟な塊となって舌の上にボテリと乗っかる。
途端にジンワリとした甘さとアズキの風味が密閉空間に広がる。
少々硬めに仕上げられた舌触りの漉し餡は口内に入ってその水分を強奪後、
滑らかに変容してそこから上品な甘さとほんのり漂うアズキの風味を拡散させる。
舌先に感じるかなり粒立ちのハッキリした餡の粒子がサラリと流れて行く感覚が心地良い。
その段になってサッサと餅の密閉を打破するべく負けじとグニュリと圧を掛ければ、
舌の上に鎮座していた漉し餡はのぺっと伸され更に口内にその風味を浸透させていく。
そこで今まで表舞台に出なかった赤エンドウ豆がその本領を発揮、
徐々に口内の水分に侵食され始めた餅と漉し餡と片栗粉に代わって登場。
柔らかな空間にその硬派な歯応えで食感のアクセントを演出、
コレゾ文字通りの口直しといった感じで弾け始める。

赤エンドウ豆の風味とコクが濃厚で、
ソコにジワリと染み渡るような塩気が舌を刺激する。
しかし赤エンドウ豆に良く見られるアクの存在はほぼ感じられず、
赤エンドウ豆としての濃厚な風味と甘さだけが選りすぐられた様に表に出る。
そしてこの赤エンドウ豆の存在によってアズキの上品な甘さが更に引き立ち、
「豆大福」全体をつかさどる風味に拍車が掛かり、
やがて流れる様に滑らかさで一気に喉の奥底へと誘っていく。

そしてコノ時になってようやくコチラ「あんや」の「豆大福」を支配する滑らかさは、
アノ片栗粉の極上の滑らかな舌触りから始まっていて、
しかもソレがいまだに口内に鮮明に残っている事に気付く。
いやはや片栗粉も侮りがたしである。



あんや
東京都世田谷区成城6-5-27
9:00~20:30
元旦以外原則無休
(年2日程度のメンテナンス休業有り)
北口と西口の大体中間。徒歩1分。