首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

松露 ことぶきや【東長崎@西武池袋線】

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豆大福(つぶあん):140円


「松露 ことぶきや」の「豆大福」は約52㎜前後の大きさで、
その表面をザラザラとした質感を湛えた片栗粉が分厚く覆ってはいるものの、
餅の中に数多埋もれた赤エンドウ豆が強烈な自己主張をする「豆大福」である。

それはただ己の黒い影を表へ映し出すだけに留まる事無く、
遂には表層へ浸食しだし障壁となる餅を易々と融解し突破を果たし、
ゲル状化した餅はキラキラとした光沢を放ち、
赤エンドウ豆を覆う種皮の赤黒さに更に拍車を掛ける。
その様はまさに雪で覆われたガミラス星の様でもあり、
戦闘機の機体に表れた弾痕の様でもあり、
つまりはまとめて松本零士的世界観ともいえる訳である。
そんな大マゼラン星雲内のサンザー太陽系の第8番惑星の小型版を持ち上げるために、
指で摘まもうと探りを入れるが赤エンドウ豆の浸食は至る所で発生している。
意を決して闇雲に摘まんでみると当然指先にはペタリと餅が引っ付く場所があり、
一方片栗粉で覆われか箇所は指先にパリパリとした珍しい感触を伝えて来る。
そして餅自体の感触はといえばふわりとした柔らかさを湛えていながらハリもあり、
指先を少し沈ませただけで直ぐに安定位置をキープしたら、
やがてしっくり落ち着いて指先にクンッとした重さを掛けて来る。
そしてその落ち着いたところを狙って横っ腹からパクリと喰らい付く。

喰らい付いた矢先に口に伝わる弾力は柔らかを維持しながらもパンと張った感触を誇る。
ならばと全ての衝撃を吸収しようとしているかの様な餅へ歯を立てて分断を試みると、
心地良い口当たりの後にスクッと噛み切れて口内へ収った後にふと噛み口を見て驚く。
コチラ想像を遥かに越えた粒餡を覆う餅の分厚さは、
赤エンドウ豆なら2粒位は余裕で内包できる程であり、
おまけに十分な潤うまで湛えて断面をキラキラとした輝きで埋め尽くす。
加えて餅のキメが荒くツブツブとした感触が残っていて食べ心地にダイレクトに反映してくる。
ほんのりとした塩気を含んでいながら噛み続けるとフワッと広がる甘さもあり、
そしてそのほんのりと赤茶色い色味を湛えているという餅である。
この塩気と甘さのバランスの妙はこの独特な色味をした餅の固有能力なのだろうか。

そんな事を考えている間も大量の片栗粉に返り討ちにあった口内で、
「松露 ことぶきや」の「豆大福」は如何なくその弾力を発揮し、
その弾力を鎮めようとする咀嚼行為を次々に受け流す。
フニフニと弾む餅をただ押し返す事を繰り返すだけの口内に、
餅に埋もれていた赤エンドウ豆もやがて主張をしだし至る所にその硬い身体をぶつける。
しかし餅に在る様な柔軟性など当然持ちあわせない赤エンドウ豆は簡単に捕縛が可能で、
アッサリ奥歯に固定されたちまちコリコリと噛み砕かれていく。
ただでさえ塩気の効いた赤エンドウ豆は種皮を破られる事により更に口内へ塩気を追加し、
そして内部からホロホロと崩れた赤エンドウ豆は独特の風味とコクを発散して餅へ入り込む。

そして赤エンドウ豆が噛み潰される勢いを受けて中に潜んでいた粒餡が、
ニュルリと押し出され口内へ向けて放出される。
そうなるともう口内はアズキの風味で一杯に満たされて、
塩気に浸っていた舌をスッキリとした甘さに塗り替えを始める。
そしてそれは粒餡の甘さを更に引き立てて最少を以て最大を成し得る結果となる。
優しい甘さを漂わせる粒餡は皮を含めたアズキの食感が濃密に残り、
シャキシャキした皮とサラサラと滑らかな子葉の舌触りが対となって広がる。
最早塩気は粒餡に内包されソレを含めて全て甘さへと変換させられる。

そんな段になっても餅は相も変わらす柔らに口内を跳ね回る。
そしてしばらくモグモグ咀嚼を繰り返した後に、
一口目だしこれ位で勘弁してやるかと誰に対してかの言い訳をして、
まだまだ弾力を維持している餅をゴクリと飲みこんでいく。



松露 ことぶきや
東京都豊島区長崎4-4-8
8:30~20:30
不定休
北口前の道を右へ進んだ先の最初の十字路を更に右へ進んだ少し先。