首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

麻布 青野総本舗【六本木@東京メトロ日比谷線 都営地下鉄大江戸線】

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豆大福(こしあん):180円


創業安政三年の老舗和菓子店「麻布 青野総本舗」。
その「豆大福」が新しくなったらしい。
公式発表によると何でもちょっぴりサイズが大きくなったとの事だが、
実際の所その数値が無いのでピンとこないのが現実である。

ビニール袋に入れられた「豆大福」を手に取ると、
その見た目以上にズッシリとした重さを感じる。
早速取り出すと指先にシックリと貼り付く餅はハリが強く、
指を押し返す弾力はタンパク質で出来た“皮”を髣髴とさせる。
指先に伝わるシッカリ餡が詰まっていそうな量感があるが、
大きさ的には約50㎜でちょっぴり大きくなった今でも、
一般的な「豆大福」よりは多少小振りではある。

ツルンと滑らかな表面をした餅はふっくらと、
柔らく座り心地良さそうな座布団の様に盛り上がっている。
白磁に輝く餅の中に埋まっている赤エンドウ豆は其処彼処に姿を現し、
所々で表面を覆っている餅を自身から染み出る水分で溶かし始めている。
キラキラと反射する片栗粉は裾野部分で霜のように張りき、
頂上部分では霧のように塗されて鉱石的なコントラストを描き出す。

早速一口齧り付く。
難なく口に納まる大きさの「豆大福」を何時みたいに噛み締めると、
フニャリとした餅の食感と同時にゴツゴツした感触が現れる。
大概の「豆大福」は齧り付くと餅の表面に出ていた赤エンドウ豆は、
餅の柔らかさに飲み込まれ「豆大福」内部へ沈み込む事が良くある。
しかしこの「麻布 青野総本舗」の「豆大福」は、
赤エンドウ豆は圧し掛かる顎からの圧力を、
ハリの強い餅と共に真っ向正面から迎え撃ってくる。
その足場となる餅は均一の厚みで中の餡子を覆っていて、
豊富な水分は餅の中で層を作りキラキラと光沢を放つ。
食感は柔らかだが噛み応えも十分に備えていて、
餅特有の伸び自体は少ないが口の中で得た水分を吸収したら、
備え持った粘着力を発揮して口のアチコチへペタリと貼り付く。

一方の赤エンドウ豆自体は硬い種皮がプチッと弾けて潰れると、
中から赤エンドウ豆特有の風味がたっぷり放出される。
少し青味が残った大変野菜的な味わいが、
取り囲んで来る餡子から発するアズキの風味と交わると、
お互いを引き立てあって深い味わいを生む。
そして何より「豆大福」の外見からは測れない程、
沢山の赤エンドウ豆が入っていた事に驚く。
一口齧り付くごとに何処かで結構な数がコロコロ現れて、
そこで次々にプチプチ噛み砕けては弾けていくのだ。

意外に強固な境界を突破するとその先で、
緩く柔らかい餡子がニュルリとタップリはみ出してくる。
水分が多い漉し餡は口に入ると滑らかなままユルリと広がる。
サラサラと粒子の感触が残る舌触りのまま口の中の至る所に入り込み、
上品で控えめな甘さとほんのり漂うアズキの風味を、
ゆっくり擦り込んでいくみたいに口の中へ浸透させる。
それは餡子がまるで熟れた果物の果肉を思わせる舌触りであり、
外側を包んで守る餅と豆は柔らかくハリがあって分厚い果皮である。

そうして餡子が緩やかに口の中になだれ込んでくると、
咀嚼する度に口の中に甘く優しい渦を造り出す。
上品な甘さと風味で満たされた空間となった口の中を、
コシを保った餅と滑らかな舌触りを残した餡子が、
暫くの間を絡まり合いながら回遊を繰り返す。
やがて漸く馴染み始めたかなと思い始めた矢先に、
口の奥へと移動して行きスルリと喉の下へと消えて行った。

「麻布 青野総本舗」が作り上げた新生「豆大福」は、
つまりは旬の果実を食べた様な感覚にひたれるのだ。
それは御菓子という食べ物の起源を遡る様な行為であり、
それこそ老舗和菓子店だからこそ体現できたであろう、
日本の歴史と文化が築き上げ積み重ねて来た、
本来の“御菓子”と言う物の姿なのだろうと感じたのだった。



麻布 青野総本舗
東京都港区六本木3-15-21
平日 9:30~19:00
土曜・祝日 9:30~18:00
日曜・元旦 定休
六本木交差点から外苑東通りを飯倉方面へ進んだ先の六本木五丁目交差点角。