首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

塩瀬総本家【新富町@東京メトロ有楽町線】

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豆大福(こしあん):270円


貞和5年(1349年)創業の東京が誇る老舗和菓子店、
“志ほせ饅頭”でお馴染みの「塩瀬総本家」の「豆大福」である。
既にビニール袋の中で白い霞を生み出していて大きさは約58㎜で、
「豆大福」の表面を覆う片栗粉は専有面積自体それほど多い訳では無い。
しかしそのシッカリと盛られた箇所にある片栗粉は多く、
そこに小さな丘陵地を造り出しなだらかな複雑な稜線を描いている。
一方で真っ白な台地の下にある餅は全体的に黄色味を帯びていて、
片栗粉との淡く柔らかなコントラストを造り上げる。
餅に沈み込んでいる赤エンドウ豆は思いのほか多く、
分厚い片栗粉と餅の下にボンヤリとくすんだ影を浮かべる。
いくら慎重に袋から取り出しても、
表面に貼り付いている片栗粉は剥がれ落ちる。
それは月へ向かう宇宙船の映像で見た白い欠片に剥離を連想させ、
その行く先である月面の様な「豆大福」は指の間で浮かんでいる。
餅の指触りは柔らかでありながらハリがありフワフワして、
肌触りの良いパフを摘まんでいる感触である。
指と餅の間に割り込んで来る片栗粉はサラサラ滑らかに流れ、
毛足の短いビロードを撫でているみたいである。

先ずは一口齧り付くと口の中一杯に餅の柔らかな感触と、
片栗粉のサラサラした食感が貼り付く様に隅々まで満ち渡る。
口角からハラハラ零れ落ちる大量の片栗粉は、
胸元に降り積もり小さな雪景色を描き出す。
フンワリした感触のままをスクッと噛み千切ると、
「豆大福」の半身は片栗粉に乗り口の中をスルスル動き回る。
餅は分厚くて染み出しそうな水気を湛えている。
やはり黄色味があって温かな色合いはまさに“米”であり、
ぐるりと餡子を取り囲む光景は“おむすび”を連想させる。
歯応えある強いコシと程よい柔らかさで伸びも良く、
噛み続けて行くと漂う甘い米の風味も力強い。

舌にボンヤリ伝わる片栗粉の風味を確認した後に、
一瞬ジワリと餅の淡い風味が現れた後に、
怒涛の勢いでしっかり輪郭を持った甘さの波が押し寄せる。
噛み口からニュルリ漏れ出してきた餡子から発する甘さの波は、
柔らかな餅を一瞬で包み込んでしまい柔らかな塊りへと変える。
クニクニ噛み締める度に広がる上品であり、
尚且つシッカリとした甘さと風味を隅から隅まで染み込ませる。
モッタリ重たく粘りも強いが瑞々しく潤いを含んだ漉し餡は、
薄赤紫色の表面にキラキラ光りの粒を散らす。
シッカリ強い甘さと風味だがくどさは無く至極上品である。

その端々ではコツコツ硬く丸い一団が緩衝材の様に、
自由に動き回る柔らかなカタマリを保護している。
種皮の硬さと子葉の柔らかさのコントラストに潜んだ、
ほんのり漂う塩気と赤エンドウ豆の風味が弾ける。
やがてその一団も柔らかなカタマリに取り込まれては、
それらもろともグシグシ噛み潰されてしまうのだった。
その時に発せられるキラリ光る塩気は、
赤エンドウ豆達の流した涙の軌跡かはたまた意地の一発か。
などと考えつつ柔らかさの極致を迎えたソレを飲み込むと、
フワッと鼻腔を抜けて行くアズキの風味と、
口の中にシッカリ至る所に残った甘い残り香を堪能する。

創業600年を超える老舗和菓子店が提供する庶民の和菓子は、
伝統に裏付けられた技術を駆使して作られた品。
看板商品である“饅頭”や“羊羹”はもとより、
新興勢力の“レーズンサンド”や“フィナンシェ”の台頭があろうと、
老舗「塩瀬総本家」の裏番長的存在である「豆大福」の、
力強さを発揮する圧倒的存在感は揺るぎ無いのである。
歴史の重みを受け止める強くて柔らかなコシを発揮して、
今日もそして明日も商品棚の一番上に陣取って、
老舗の味に惹かれたお客を出迎えてくれるだろう。




塩瀬総本家
東京都中央区明石町7-14
9:00~18:00
日・祝 定休
6番出口を佃大橋方面へ進み佃大橋の信号を渡り右折して、2つめの左折路へ入って直ぐ。