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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

塩野【赤坂@東京メトロ千代田線】

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大福(こしあん):260円


赤坂「塩野」の菓子棚の上で蓋付のプラスチック容器の中に入れられ、
約56㎜の身体を埋めて店頭に並んでいるのは「大福」である。
とはいえいくら店頭表示が「大福」であっても、
遠目から見る白く丸い姿に浮かんだ黒い豆の姿は、
容器の裏に貼られた原材料からしてまぎれも無く「豆大福」である。

その容器の蓋を開けて底に敷かれたビニールの両端を摘まんで持ち上げると、
重みと共にスッと持ち上がる「大福」から片栗粉の剥落は少ない。
表面で渦巻く片栗粉はシッカリと盛られてあり、
真っ白な漆喰壁を思わせる風合いを醸し出す。
餅の姿はその片栗粉の合間に空いた隙間から僅かに窺える程度で、
中で埋もれている赤エンドウ豆と同様にボンヤリと淡い影を浮かべている。
表面で見る限り赤エンドウ豆の量はタップリで、
これで店頭表示があくまでも「大福」という奥ゆかしさである。
手に取ってみると餅はフニャリと柔らかく、
想像以上にフワフワの触感が指先を包み込む。
そんなハリは少ない餅であるがコシは強そうで、
中心部の硬めの感触を確認した後はすっかり安定している。
そのまま型崩れしないでいる「大福」は、
時々指と餅の間で片栗粉のキュッという音を発てつつ、
中空で安定姿勢を保ち続ける。

一口齧り付いてみる。
口一杯に広がる柔らかな餅と滑らかな片栗粉の感触の後、
表面を打ち破ってニュルリと粘り気の高い餡子が飛び出してくる。
粘り気が片栗粉の滑らかさを凌駕してゆき、
たちまち口の中を隅々まで入り込んで甘い空間へと塗り替える。
舌先に絡まって甘さと風味の上書きを繰り返す餡子と、
ニュルニュルと滑る口の中でクニクニと弾む餅の歯応え。
餅はほぼ均一の厚さで中の餡子を包み込む。
厚み自体は程々で少々青味がかった薄い灰色をしていて、
噛み口からはキラキラ光沢が放たれ瑞々しさを披露している。
想像通り歯応えは柔らかいがコシはシッカリしているので、
食べ始めの餅には伸びる力は少なく引っ張れば直ぐにブチリと千切れる。
しかしソレも幾度か咀嚼を続ければ柔らかい、
いわゆる“餅”としての食感を発揮し始めるのである。

その繰り返される咀嚼行動の間には、
次々と餅の中へアズキの風味が擦り込まれる。
有無を言わさぬ怒涛の流れは強引の様に見えるが、
何処までも上品に流れる様な手順を以て厳かに行われる。
滑らかで粘りがあって当初の甘さはキリッとしている。
しかし瑞々しさが口の中へ一杯に満たされ始めると、
染み渡る水のようにアズキの風味が広がりだす。

やがて口の中で刻一刻と滑らかになる餡子の海を泳ぐ餅は、
内包した赤エンドウ豆と連れ立って幾度か回遊を繰り返す。
やがて餡子と餅はユルユルと同化を始めると、
露わになった赤エンドウ豆は吸い込まれる様に奥歯へと誘われる。
そのまま諸共噛み砕かれモグモグ咀嚼を繰り返されると、
混ざり合いながらも各々の持ち味が発揮され煌めきを現わす。
赤エンドウ豆の硬い種皮を噛み砕くとボロボロと綻び、
餡子の甘さに比べて控え目な塩気が滲み出す。
中の子葉がホロホロと零れ出すと赤エンドウ豆の確かな風味が、
舌の上にあった甘さに静かに寄り添いだす。
青味と苦味とほんの少しの雑味がさらに甘さを引き立たせ、
後味の軌跡の中に彩りを加える。
しかしそれはあくまでも上品な佇まいのまま、
何かがしゃしゃり出る事無く楚楚とした口当たりを維持しながら。
そして去り際にはサラサラの喉越しと口当たりを残し、
口の中にはほんのりとアズキの風味を漂わせる。

高級料亭がひしめく赤坂界隈で永年愛され、
上生菓子で名を馳せる老舗和菓子店が届ける“庶民の和菓子”は、
やはりその生まれの良さを隠し切れない上品さが溢れだす。
奥ゆかしさを堪能しながら滑らかさを味わう、
言うなれば“上大福”といった所なのだろう。



塩野
東京都港区赤坂2-13-2
月曜~金曜 9:00~19:00
土曜・祝日 9:00~17:00
日曜 定休
2番出口を右へ進んだ2つめの右折路へ入った直ぐ。