立花家【代田橋@京王線】
代田橋『立花家』には、“つぶあん”と“こしあん”の「豆大福」が売られている。
“つぶあん”の「豆大福」は半球形で大きさは約52㎜。
起伏の激しい餅がうねり、「豆大福」の表面に雄大な地形を作り出す。
細かいまだら模様を描きながら所々で反り返り、
毛羽立ちながら隆起し銀鱗を想像させるタップリの片栗粉が塗されている。
その一面白で覆い隠された隙間からはチラリと紫水晶色の餅が見える。
デコボコした表面は手作り感が溢れ出し、
ひんやりした色合いでありながらジンワリと温かみが感じられる。
餅の中には赤エンドウ豆がこれでもかとタップリ入っている。
餅の中で押し合い圧し合いしながら、
片栗粉越しにぼんやり見える豆が造り出すシルエットは、
この「豆大福」の表面積の50%は有に占めているであろう。
一方“こしあん”は少し押し潰し扁平した姿をしている。
おかげで大きさは約58㎜と大振りになっていて、
小さな鏡餅の下の段みたいな姿をしている。
鏡餅みたいな印象は形からだけの印象では無い。
“こしあん”の「豆大福」は表面がツルリ滑らかな仕上がりで、
“つぶあん”の様な荒々しさは姿を潜めている。
緩やかな曲線は表面の片栗粉にもシッカリ疎通がされ、
毛羽立ちは少なくまだら模様を描くような箇所も少ない。
目立つ凹凸といえば当然コチラにもしこたま入った赤エンドウ豆が、
餅の下から見せる自己主張位なモノである。
凹凸の下には当然赤エンドウ豆がばんやり影を浮かべていて、
白と黒のコントラストを描き出す。
手に取ると柔らかな餅がゆっくり指先を避けて回り込み、
徐々に「豆大福」の内部へと引き込み始める。
やがて内部に鎮座する餡子に行く手を遮られ「豆大福」は安定する。
先ずは“つぶあん”の大福を摘まみ上げ一口齧り付くと、
上下の顎には真っ先に赤エンドウ豆達のゴリゴリした歯応えが響く。
その怒涛の攻勢を手当たり次第に噛み砕き、
磨り潰しながら合間ではかない抵抗を繰り返す餅を噛み千切る。
赤エンドウ豆はコロコロと丸く餅の中でコチラの出方を窺っている。
見つけ出し容赦なく噛み潰せば塩気を発して砕け、
中からは栗に近い風味と僅かに感じる苦味を下に擦り込んでゆく。
餅は厚く水気はタップリ含んでいるがコシが強く、
引き伸ばすとブチリと直ぐに千切れる。
餅的な伸びは少ないが粘りが豊富で噛めばモチモチの噛み心地である。
噛み切った餅の中からドロンと溢れ出す甘さが広がる。
水気は少なく締まった餡子はネットと力強い舌触りで、
ドライフルーツに似た有機的で複雑な深い味わいを発揮する。
そこにアズキの風味が寄り添う様に香り、
次第にこのどちらかといえばエスニックな餡子を、
馴染み深い“つぶあん”へと徐々に引き戻してゆく。
そして「豆大福」としての総合的な甘さがゆっくり浸透して、
やがてその甘さが飽和状態を迎えるとアッサリ引いて、
口の中から次第に消えてそこにほんのりエスニカルな後味を残す。
一方の“こしあん”は餅を越えた先はとても滑らかで、
コチラも水気が少なくモッタリした食感が一口目から伝わる。
一転して控え目で抑えた甘さで仕上げられた餡子は、
ほんのりと口の中にアズキの香りを漂わせる。
出過ぎず餅の食感と赤エンドウ豆の風味と一体となったアズキの風味が、
口の中へ優しく広がりストンと落ち着いて納まる。
食べ応えのある餡子は次第に水気を増してゆったりと舌に絡まり、
意思を持った液体の様に奥を目指し進行を始める。
“つぶあん”としての役割と“こしあん”としての矜持。
しかし双方ともに食べ心地は優しくモグモグ納得いくまで噛み締めると、
トロンと掬い取った匙から零れ落ちるみたいに胃袋へ落ちて行く。
そんな両極端な餡子を包むなら餅は素朴な方が良いなと、
かなりアッサリした餅をクニクニ噛み締めながらボンヤリ思ったのでした。