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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

おむすびのなみき【椎名町@西武池袋線】

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豆大福(つぶあん):110円


椎名町『おむすびのなみき』の「豆大福」は大きさが約72㎜で、
中央部をペコリと窪ませてながら平たく成形されている。
全体的にはイビツでかなり個性的な姿ではあるが、
普通の「豆大福」でよく見られる豆が突出した小さな突起は少なく、
一見すると普通の大福かと思える位に稜線自体はなだらかである。
加えて豆が餅の中にスッポリ埋もれているので、
際立つ黒さが無く薄ら影を浮かべるだけに留まっている。

なので外見上は大変に白い。
餅自体は薄らと黄味掛かっていて総じて象牙色で、
キメが細かくツルリとした質感を全体に湛えている。
その透き通る質感が放つ色合いも要因である事は間違いないが、
何よりその表面を覆う片栗粉が尋常ではない。
先ずその質感の他に類を見ない過剰なまでのサラサラ感である。
当然「豆大福」の表面には滑らかに片栗粉が塗され、
粉雪が降り積もった様な起伏の少ないまだら模様を描いている。
そしてその粉雪感は「豆大福」に動きが加わると更に発揮される。

指先で摘んでみると指と餅の間でサラサラ動くのは序の口で、
持ち上げるとハラハラ下方へ砂時計の様に零れ落ち、
「豆大福」に出来た窪みに溜まった片栗粉は巻き上げられ中空を舞う。
そして「豆大福」表面を流砂の様に移動して、
吹き溜まりに集まりそこで新たな模様を描き始める。
周囲に出来るほんの僅かな空気の流れで、
「豆大福」の表面にある片栗粉は寄る辺なく動き出すのだ。

指に伝わる餅の感触は強いハリを保持しており、
指の周りだけが窪まずに「豆大福」全体で変形し始める。
当然その時にも片栗粉はサラサラ滝の様に流れ落ち、
受け止める手の平に小さなゲレンデを造り上げる。
その姿勢のまま口元へ「豆大福」を運び、
口の中に隙間が無くなるまで齧り付いてみる。

端から発揮される餅の弾力に両顎は押され、
一気に噛み切ろうとする動きを阻まれる。
歯に伝わる感触からは明らかに分厚く、
所々では内包された豆の硬い質感も発揮されている。
だが顎の進攻自体は止む事は無く、
餅の弾力をそのままに徐々に圧縮し始める。
受け止める餅は前歯を包み込みながら、
次第に内部の密度を高め始める。
やがて極に達した餅へ前歯がサクリと食い込むと、
後は絹を裂く様にスルスル切れ目が広がって行く。
そのままブチリと両断して口に納まった「豆大福」は、
周囲に従えた片栗粉を口の中に貼り付かせる。
サラサラと滑る「豆大福」を成すがままにして、
先ずは口の内圧を高めてクニクニと全体で揉み始める。
噛み口からは餡子を包み込む分厚い餅が、
十分に水気を湛えた光沢を張り付けているのが見える。

その外圧を跳ね返す為に餅が持ち前の弾力を発揮すると、
内部に潜んでいた餡子から漂うアズキの濃い風味が漏れ出る。
その香りに刺激を受けて口の中で水気が増し始めると、
片栗粉は押し流されて徐々にクニクニ噛み心地が増し出す。

その動きに同調して餡子が中から押し出されると、
素朴で濃厚な風味と甘さを口一杯に広げ始める。
舌に広がる懐かしさを湛えた甘さは更に味覚を刺激して、
モッタリとコシのある餡子を緩く滑らかに仕上げて行く。
アズキの皮がシャキシャキと軽快な歯応えを発揮しながら、
そのまま餅に絡まり餅に粘りを加え始め、
猛威を振るっていた弾力の無力化を図る。
加えて餅の内部に潜んでいた豆が次々に押し潰れて、
餅の中に異質な空間を造り出してゆく。
豆自体は甘さを含み感触は硬いが食感は柔らかい。
この甘さと風味と種皮の黒さは黒豆なのだろうか、
皺が寄った舌触りが独特の歯応えを生み出している。
そこから発せられる周囲の餡子とは異なる甘さが現れ、
味と香りに更なる変化をもたらしてくれる。

しかし水気を得た餅とはいえ弾力を失う事は無く、
弾力を粘り気へ返還させ変わらぬ歯応えと口当たりを発揮する。
そうしている内にやがて本能的に限界がやって来た。
口の中に満ち溢れた風味に晒された味覚が、
嚥下したいという欲求に駆られ「豆大福」を徐々に喉の奥へと運び、
そして遂には胃袋へと送り出してしまうのだった。

和菓子屋や餅屋とは異なる米屋の「豆大福」は、
米という食材の持つ能力を生かす術の素晴らしさを実感できる一品でした。
そして餡子の素朴で力強い味わいに驚きつつも、
そういえば店頭には豆類も置いてあったことに今更思い出す。
豆にも抜かりない米屋の和菓子に敬意を払いつつ、
創業昭和3年の老舗の底力を実感するのだった。



おむすびのなみき
東京都豊島区長崎1-3-11
8:00~19:00
月曜 定休
北口に出て左へ進み、すずらん通りのアーケード前を右に曲がった先。