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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

ふるや古賀音庵 幡ヶ谷本店【幡ヶ谷@京王新線】

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塩豆大福(こしあん):180円


幡ヶ谷『ふるや古賀音庵 幡ヶ谷本店』に並ぶ「塩豆大福」は、
約50㎜の大きさで透明の四角い菓子ケースに入れら売られている。

半球体に形作られた表面にビッシリ分厚く片栗粉が貼り付く様は、
剥きかけのゆで卵か白銀のスケイルアーマーを連想させる。
なのでその下にある餅は無数の白い小片に阻まれて、
隙間から僅かに覘く程度にしか確認する事ができない。
その僅かな隙間から伺える餅は少し濃い藍白色を発し、
染み出て来そうな水気を湛えた透明感を保持しているのが確認できる。
その餅と片栗粉の間には丸々とした風貌の赤エンドウ豆が、
餅の上に腰掛けているかの様に其処彼処で外に姿を晒している。
当然餅の中にも赤エンドウ豆は入っていて至る所で小山を作るが、
何しろ分厚い片栗粉のおかげでシッカリ確認が出来ない状態である。
僅かに見える餅に黒い影が浮かぶ箇所もあるが、
それが赤エンドウ豆か餡子かのか判断が難しいい状況下にあるのだ。

先ずはケースの蓋を開ける。
それだけで「塩豆大福」の表面は震え、
表面の片栗粉を剥落させる。
さらにそこから摘まみ上げようとするが、
ケース内にピッタリ収まった「塩豆大福」の周囲に、
指が差せ込める様な大きな隙間が見当らない。
なので半ば強引に指を食い込ませて吊り上げ、
「塩豆大福」をケースから引っ張り出す。
指先にはガサガサと流動する片栗粉と共に、
水風船を彷彿させる驚異の柔らかさを発揮する餅の感触が伝わる。
それは正しくコシやハリを超えた“弾む”指触りで、
とても固体とは思えない質感を湛えている。
しかしだからと言ってコシやハリが無い訳ではなく、
摘まんだ指先シットリ包み込むとそこからは一切の型崩れは無い。
そこから指の腹にシッカリ吸い付いて佇む「塩豆大福」を眼前へ置き、
摘まみ上げた時から終始剥落が止まない横っ腹へ静かに齧り付く。

唇で挟んだ途端に胸元へ片栗粉がバラバラ落ちて積もって行く。
そしてフルフル柔らかい感触が押し当てられるが、
あっと言う間に押し潰されて「塩豆大福」は次第にくびれ始める。
餅自体のハリは「塩豆大福」を守りきる程ではないので、
そのまま唇だけで難なく中身ごと両断される。
歯を立てる暇も無い位あっと言う間に分断された「塩豆大福」は、
柔らかい食感を発揮しながら流れる様に口の中へ納まる。
片栗粉と餅の滑らかな感触とその中身あるコロコロ硬い質感が、
頬の内側で三重奏を奏でて穏やかに主張を始める。
噛み口を見ると餅の質感は当にガラス細工の様で、
断面全体をヌメッとしたたり落ちそうな潤いが覆う。
フルフル震えて粘りに裏付けられた伸びは強固で、
餅全体がグッと伸びて餅全体でプチンと千切れるのだ。

一方で噛み口から零れ出た餡子は至る所に付着して、
そこから撒き散らされたアズキの風味が一瞬で世界を塗り替える。
芯の通った甘さを湛えた漉し餡は水気が少ない締まった食感で、
舌の上のコロンと出て来てそこで水気を吸い上げる。
やがてネットリ柔らくなる餡子から染み出す切れの良い甘さと、
立ち込めるアズキの豊かな香りに触発されて「塩豆大福」の咀嚼を始める。
ムチムチとボリュームを湛えた餅は震える様に潰れ、
そのまま中に仕込まれていた餡子に溶け込み瞬く間に一体化を成す。
餅に取り込まれていた赤エンドウ豆もそのまま引きずり込まれ、
繰り返される咀嚼の中で次々噛み潰されててゆく。
硬めの歯応えだが噛み潰せば直ぐにグニグニ粘りを持った食感になって、
仄かな苦みを含んだコクと豆本来の甘さが塩気を纏って広がる。
やがて細かく砕けた赤エンドウ豆は再び餅に絡め取られて、
そのまま餅と餡子の織り成す空間へ消えて行く。
その後はひたすら漉し餡のネットリした口当たりと、
モッタリ重たい食感が発揮される餡子主体の空間になる。
餅の柔らかさは継続的に発揮されるが、
徐々に水気を得てヒタヒタ舌を撫でる独特な感触へ変わる。
そして十分な水気を吸収してタプタプと口の中に満ちて、
遂には液体まであと一歩という状態までに至り、
やがてはゆっくりと飲み込まれて行くのだった。

とはいえここに至るまでそこまで噛んだ覚えは無く、
突き詰めれば含まれた赤エンドウ豆の数と同程度の範疇だろう。
つまり硬いから噛み砕くという自然の摂理以上の事が起こらない、
挙動が少ない静かな食べ心地がこの「塩豆大福」の真骨頂ではなかろうか。
そんな事を胸の片栗粉を払いながら思うのだった。



ふるや古賀音庵 幡ヶ谷本店
東京都渋谷区幡ヶ谷3-2-4
9:00~18:00
元日 定休
北口を出て甲州街道を左へ進む。左手に現れる六号通り商店街へ入り後はひたすら直進。