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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

五十鈴【牛込神楽坂@都営地下鉄大江戸線】

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豆大福(こしあん):205円


神楽坂『五十鈴』で「豆大福」を買う。
ふっくらとまあるい姿が、ビニール袋の中にある。
キメ細かい餅の質感が、ビニール越しでもよく判る。
滑らかな輪郭と、淡い白を纏った姿は、磨き上げた白水晶のようだ。
手に取ると伝わる感触は、綿花の様にふわりと柔らかい。
しかし指先にはズッシリと、芯を感じる重さで圧し掛かる。
そっとビニール袋を傾ける。
中の「豆大福」はゆっくりにじり出して、やがて目の前に現れる。
大きさは約58㎜で、白いツクリタケの様に膨らんでいる。

餅の表面には片栗粉が、ビロードの輝きで塗されている。
それが全体を万遍なく覆い、細かい光沢を放つ。
裾の周りでは厚めの片栗粉が、地吹雪の様に沸き立ち、文様を描き上げる。

白い片栗粉の下には、絹織物の質感を湛えた餅が、ツルリと滑らかな曲線の張りを見せる。
ふくよかなシルエットを支えるのは、この静かな緊迫感なのだろう。
そして乳白色の色に満ちた中には、濃淡様々な影が浮かんでいる。
中心にある餡子の姿は淡く、餅に射す影と区別がつかない。
一方で丸い影の赤エンドウ豆は、「豆大福」に点々と配されている。

餅の中に込められた豆達は、とても自由奔放に散っている。
だが外に出たなら片栗粉を被り、中に沈んだなら餅に覆われ、どれもが白い霞の中に映えている。
白く滑らかな曲面上の豆達は、まるで北海の氷原に映る小島である。
ソコにわずかに滲んだ水気の反射が、冷えた輝きを放つ。

指で摘まむと、表面の片栗粉がツルリと滑る。
捉えようと込められた力を、次々華麗に受け流す。
その下にはツルリと滑らかな餅肌が潜んでいる。
だが掬う様に持ち上げれば、指にもたれ掛りしっくり納まった。
ふんわり優しい指触りは、衝撃を餅の内部から受け止める。
押し付けられた力を、「豆大福」全体で対抗して、指の周りの餅を大きく窪ませる。
指先にシットリ纏わり付く餅は、フルフル瑞々しく震えている。
だが餅にはハリがあるので、ヘコみはするがツブれはしない。
指が離れればすぐに、元のまあるい姿に戻ってゆく。

先ずは一口齧り付く。
唇の間で静かに餅が弾む。
ソレを押さえ込んで、ゆっくり力加えると、餅から強いハリが発揮される。
直ぐに前歯を餅に突き立てると、柔らかな歯応えが包み込む。
カーテンを開ける様に広がる切れ目から、豊かなアズキの風味が広がる。

サクッと分断されて、口の中に転がり込んだ「豆大福」が、頬や歯に密着してゆく。
餅自体は厚さも程々で、均一に覆われている。
水気もタップリで、米の甘さと風味もしっかりしている。
顎を動かしモグモグ「豆大福」を突いてみる。
その動きに合わせて餅が震えると、中の餡子が口の中へ零れ出る。

ゆっくり蕩けて広がる餡子は、舌に触れると味覚を甘く染め上げる。
それが餅に絡まると、餅は更に柔らくなる。
餡子はネットリ強かな口当たりの“こしあん”だ。
ネバリはあるが滑らかなので、舌の上にスッと伸びる。
甘さは上品で抑え目だが持続力があり、アズキの風味も豊かである。

そんな中、豆は硬いまま激変する環境の中、ジッと身を潜めている。
餅が動けば豆も動き、ゴツゴツ硬い感触で頬を撫で上げる。
赤エンドウ豆の風味が豊富で、ほんのり塩気が漂う。
種皮は硬いが中は柔らかく、プチッと弾ける様に潰れる。

咀嚼の嵐を耐え忍び、細かくなっても餅の弾力は失われす、シコシコと心地よい歯応えを奏でる。
すっかり液状化した餡子の中を、細く伸びた餅が回遊する。
ツルンと滑らかな餅の舌触りと、ザラザラと細かく砕けた豆の食感が、
ネットリと質感のある餡子の中で一つになる。

“こしあん”の滑らかな口当たりが、やがて嚥下を促し始める。
そして川を遡るウナギの稚魚の様に、餅は喉を渡り始め、次々胃の中へ飛び込んでゆく。
後には“こしあん”のほのかな残り香が、何時までも漂い続ける。

花柳界の雰囲気が残る神楽坂の、登り切った所で出会える「豆大福」は、粉白粉を湛えたパフを思わせる。
まあるくて愛らしい姿が、文字通りの“半玉”なのは、果たして偶然なのだろうか。
そんな事を、目の前の“半玉”を眺めつつ思うのだった。



五十鈴
東京都新宿区神楽坂5-34
9:00〜19:30
日曜 祭日 不定休(こどもの日、お彼岸は営業)
A3出口から出て大久保通りを右へ進む。神楽坂上交差点を右へ折れて、早稲田通りを進んだ先。