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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

亀屋【経堂@小田急小田原線】

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豆大福(つぶあん):100円


経堂『亀屋』の「豆大福」が、ビニールに中で白くけぶっている。
細かい片栗粉が吹雪いて「豆大福」を取り巻く。
その中で「豆大福」は低い姿勢で佇んでいる。
まるで吹雪が通り過ぎるのを、じっと耐えて待つ姿の様だ。
餅の表面には幾つも豆が突き出て、霞の中でぼんやり浮かぶ。

手に取ると、柔らかいビニールの向こう側で餅がへこむ。
柔らかい質感が伝わり、指先を優しく覆う。
その間でビニールと片栗粉が滑り、「豆大福」が奔放に動く。
裏返して『亀屋』と記された緑色の封を解く。
ビニールは透明の花弁となり、ゆっくり咲き始める。

白い霞から現れた「豆大福」は、大きさ約60㎜。
表面がなだらかにうねり、全体に起伏に満ちた佇まいだ。
餅は裾では薄く黄味掛かった色味を湛えている。
ぞれがしなやかに伸され、ゆったり「豆大福」を形作る。
薄くなった餅に、中に潜んだ餡子の色が淡く透ける。

少し灰色が差した餅の中で、豆も鮮明に姿を晒す。
薄く伸された餅の中では隠れ様も無い。
表面に浮き出た豆達は「豆大福」で、丸い突起になる。
一方で、餅の中に潜んだ豆達も、欠かさずしっかり主張する。
突っ張った餅は擦りガラスの質感で、豆が放つ赤紫色の影を映す。

そして、それら全ての上を片栗粉が覆い尽くす。
強固な白で「豆大福」の至る所を塗り込める。
吹雪を閉じ込めた様な、荒々しい軌跡が刻まれる。
裾に貼り付いた片栗粉が、頂部へ向かって氷壁を作り上げる。
雪原を彷彿させる餅の表面に、幾筋も風紋が走る。
打ち付る片栗粉が貼り付き、豆を樹氷に変える。

餅のハリは強く、摘まんだ指先を跳ね返す。
空廻る指の腹では、片栗粉がキュッと鳴く。
指先を「豆大福」へ押し込んで、摘まみ上げる。
餅を越えて「豆大福」全体が歪み、一斉に片栗粉が崩落した。
柔らかくたわんだ餅の先で、硬く詰まる餡子の核を捕らえる。
そんな身持ちの良い「豆大福」に、真っ向から喰らい付く。

豆大福」の表面で、餅がゆっくり沈む。
強固なハリが、圧し掛かる唇を弾き返す。
片栗粉の滑らかな感触が、唇と餅の接近を阻む。
ならばと歯を立てて、「豆大福」を押さえ込む。
突き立てられた前歯が食い込み、餅が切り裂かれる。
強い弾力の果てに噛み千切られた「豆大福」が、口の中へ収まる。
噛み口からは濃密なアズキの香りが漏れ出す。

舌の上では、降り積もった片栗粉が、周囲の水気を吸い込む。
整えられた舞台の上に餅が躍り出る。
口の中で弾む餅が縦横無尽に歯の間を行き交う。
強い抵抗で伸び、爆発するように千切れ、密やかに縮む。
ソレを何度も繰り返すと、食感に次第に変化が生まれる。
やがてソコに米の存在が、穏やかに顔を出し始めるのだ。

舌が動くと餅がうねり、中から餡子がユルリと現れる。
顎を動かして餅を噛むと、中では豆が潰れて歯応えを生む。
豆はお馴染みの赤エンドウ豆。
柔らかく仕上がって、クシクシと潰れると、ふんわり塩気を放つ。
塩気の後に着いて漂うのは、豆に詰まった素朴な甘さだ。
植物的な青味を纏って、鼻腔まで一気に上昇する。

そして餡子は餅に絡まり、弾力の中に粘りを芽吹かせる。
柔らかいが強い粘り気もあり、餅や舌や歯に良く絡む。
その粘りに組み敷かれた舌がもがく度、餡子は隙間へと入り込む。
アズキの香りは濃厚に充満し、甘さは密やかに舌を振るわせる。
ソコにアズキの甘さが見えると、思わず口の中は嬉しい混乱に陥る。

餅が粘りを発揮する中で、豆の硬さが効果を発揮する。
モチモチと続く噛み心地の中で、プチッと異質な感触が加わる。
その食感が変拍子となり、プログレッシブなリズムを奏でるのだ。

そのリズムの上を、餡子の甘さが響き、アズキの香りが乗る。
豆の塩気は閃光の様に煌めき、味の流れに表情をもたらす。
そして“つぶあん”という特性が、舌へ刺激を加える。
やがて「豆大福」は、緩やかな波動に変わる。
舌の上をアズキの皮が、サラサラと掻いて駆け抜けてゆく。
その後を追う様に粘りきった餅が、細く伸びて口の中を横切る。
そして残響の様な後味が、舌や鼻腔に漂い続ける。

美味しさ、幸せ、みんないっぱい亀屋のお菓子。
その信念の元、創業昭和13年の老舗が作る「豆大福」である。
伝統の中に“美”が生まれる。
老舗が作る御菓子でも良くある事なのです。




亀屋
東京都世田谷区宮坂3-12-2
10:00~20:00
水曜 定休
北口に出て、経堂すずらん通りへ入った直ぐ。