首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

浅田家【江戸川橋@東京メトロ有楽町線】

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豆大福(つぶあん):150円


変貌する地蔵通り商店街を見守り続ける、明治39年創業の老舗和菓子店。
江戸川橋『浅田家』には、こんもりドーム型の「豆大福」がある。
大きさは52㎜程だが、高さがあるので大きく見える。

表面はタップリ片栗粉が塗され、抜ける様な白は外光を反射し、周囲に鮮烈な輝きを放つ。
分厚く覆う片栗粉には段差が生じている。
亀裂が縦横無尽に広がる姿は、さながら復元した弥生土器の様だ。
だが片栗粉自体は肌理細かく、滑らかなサテン生地に似た質感を湛える。

一方で外見はゴツゴツして、仕上がりは程ほどに荒々しい。
豆大福」の表面を覆うのは、小さな丸い起伏の集まりである。
餅自体が細かく波打つ中に混じり、漆黒の斑点が数個散るのが見える。
潤いを湛えた赤エンドウ豆が、丸い「豆大福」を覆う白に、墨滴の黒で模様を描き出す。

その潤いが溶かした片栗粉の下に、凍みた風合いで餅が覆う。
餅には細かい粒が寄り集まった質感がある。
ほんのり朱が差す薄い灰色が、一点の曇り無く広がる。
大袈裟では無い潤いが、餅の表層で細かく煌めきを放つ。

バラバラ剥がれ落ちる片栗粉を押し退け、ゆっくり摘まみ上げる。
餅はゆっくり窪み、タップリの質感で指先を包み込む。
少し窪んだ所で指の進攻と、餅の反攻が拮抗を果たす。
その後は一進一退となり、しばらくして容貌の変質も治まった。

指先が餅の水気に触れた。
ゆっくり熱が奪われると、ソコからひんやり心地よい冷気が生じる。
冷気の下では沢山の丸く硬い物体が、指先をコロコロ撫で上げる。
予想に反したその群衆は、分厚い片栗粉で覆われた外見から推し量れない。
何はともあれ、先ずはその「豆大福」へと喰らい付く。

喰らい付いた途端、唇には片栗粉が塗される。
口を閉じると餅は潰れ、口の中に片栗粉が降り積もり、その上を通って「豆大福」がゆっくり進攻する。
導かれた先へ「豆大福」が次々押し寄せ、やがて隙間を埋めてゆく。
やがて餅から跳ね返される弾力に歯を立て、一思いに切り裂いて「豆大福」の分断を始める。
ブチブチ千切れる餅と、柔らくうごめく餡子が、口いっぱいに優しい食感を生む。
ネットリ強い舌触りが重たい食感を生む。
しかしすぐに口の中で潤いを得て、優しい食感に変わる。
その中でアズキの皮が、対極の食感を放ちアクセントを生む。
それが濃厚なアズキの香りに被さり、更に濃密な風味を築き上げる。

その至る場所では、赤エンドウ豆がゴロゴロ引っ切り無しに、丸く硬い質感を押し当てられる。
顎を動かすと口の中を活発に躍動し、頬の内側を縦横無尽に駆け回りだす。
同時に「豆大福」の中から、大量の餡子がドロリ揉み出される。
滑らかに伸びて迅速に餅に絡むと、直ぐに餡子の甘さで満たされてゆく。
餡子の水気は口の中に潤いを呼び、ソレが餅を更に柔らかく仕上げ始める。
餅自体は薄い作りだが、コシが強く圧巻の抵抗力を誇示し始める。
ソレを噛み続けると、徐々に粘り気が生まれ、やがて糊状の質感にまで達する。
米の風味は優しく、舌を辿って淡い甘さも確認できる。

やがて奥歯が豆を捕えだす。
想像以上にふんだんに紛れていた豆を、矢継ぎ早に噛み潰してゆく。
静かな味わいが舌に広がり、特有の香りが味覚を揺らす。
その後に深い所で青味が漂い、ジワジワ押し寄せて始める。
アズキの濃厚な香りの中にあって、ソレは空白に似た感触を作りだす。
まさにアズキの赤に対抗する、そよ風の様な白い風味といえよう。
その穏やかな味わいが、奥歯から何度も味覚へ届けられる。

顎に伝わる餅らしい粘り気を伴う食感に、餡子の滑らかな舌触りが絡む。
ソコにアズキの皮が奏でる、シャキシャキ軽快な歯応えが加わる。
そして、その確かな食感を発揮した皮は、引き際をも心得ていてるのだ。
十分に歯応えを盛り上げた後は、トロトロ流れる餡子に紛れ流れ去って行く。

やがて「豆大福」は、液体まであと一歩の所まで達する。
舌で掻き混ぜると、重たい感触でトロリ絡み付く。
ソレを喉の奥へ追い遣ると、無抵抗でドロンと流れ去る。
そして去り際にドスンと心地良い重みで、胃の中へ落ちて行くのだ。




浅田家
東京都文京区関口1-7-3
9:00~18:00
不定休
2番出口から左へ進み、最初の信号を左へ入ると直ぐ。

越後家【浅草@つくばエクスプレス】

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豆大福(こしあん):200円


浅草『越後家』の「豆大福」は、直径が74㎜に迫る大きさ。
透明のビニール袋に、丸くて平たい身体を潜ませる。
その様子はさながら、おしろいたたきを彷彿とさせる。
すなわち、その姿は真っ白い。
特に海苔巻き等が並ぶ店先では、この「豆大福」は一段と輝きを増す。
まるで商品棚の一画だけ、灯りが燈った様な白さだ。

先ずはビニールから取り出す。
手に取るとドッシリ重たい自重が、ビニールをバリバリ鳴らす。
目の前に現れた「豆大福」には、広大な広い平原が広がる。
久々に見た“おむすび”大の巨躯である。
ソコには三つの色味が、思い思いの様子で彩りを添える。

真っ白な片栗粉は「豆大福」の外層を、シッカリ覆い隠す。
そしてムラが出来る事で、レース編みの様な模様を描き上げる。
白く小さな塊は幾つも表層に散り、花畑の様な光景を生みだす。
そして全体を霞の様に薄く、細かい光沢を散りばめ、ベールの様に包み込む。

その白が覆う間で淡く、焦げ茶色の豆が姿を映す。
豆大福」の表面で濃淡も様々に、縦横無尽に散らばり、白の中に色彩を加える。
表層近くでは餅を盛り上げ、細かい表情を「豆大福」に与える。
中でも餅から飛び出た豆には、一斉に片栗粉が取り囲み、濃い色味を中和して見せる。

その全てを支える土台の餅は、淡い黄に青味が差した色合いを湛える。
だだっ広い「豆大福」の表面を、ゆったり包み込んでいる。
白く広がるなだらかな稜線には、豆達の作る小山だけがポチポチ浮かぶ。
その下には秘めた潤いが見て取れる。
白い片栗粉が覆い隠しても、表層に生まれた透明感は隠せないのだ。

最早摘まむというより、鷲掴みに近い感覚で、巨大な「豆大福」を手に取る。
想像以上に柔軟な巨躯を、指の間でクネクネ捩じらせた。
餅が歪み始めると同時に、身を絞る様に「豆大福」が変形を始める。
指先で押し込まれた餅の周囲には、同心円状のたわみが出来上がる。
そうして遂に、巨大な「豆大福」は安定し、指先にはタップリ荷重が掛かる。
接地点では片栗粉が滑らかに動き、サワサワ流れて危うさを醸し出す。
シッカリ捕える為に力を込めると、餅はフヨフヨ揺れて震える。
強かなハリと、その奥の流れる柔らかさは、不意に水風船を思い出す。

齧り付いても当然デカい。
大口を開けて喰らい付くと、直ぐに顎は動きを止める。
歯の先には強靭な弾力が、一面の壁となり立ち塞がる。
片栗粉で滑る「豆大福」を、唇は捕らえ切れない。
ならばと前歯を餅に食い込ませ、奥深くへ射し込んでゆく。
次々現れる豆を掻き分け突き進むと、やがて無抵抗の空間へ辿り着いた。
ソコから先は滞り無く、引きずり込まれる様にスイスイ進んでゆく。
そのままアッサリ「豆大福」は噛み千切られる。

今や口の中は、綿を詰め込まれた時に似た、強固な弾力で満ちている。
顎を動かすとツルツル空廻る餅と、中から絞り出される餡子が絡まる。
口の中に貼り付いた片栗粉が、滲み出る水気を食い止める。
一方で「豆大福」から、粘り気のある“こしあん”が参戦を果たす。
ニュルニュル押し出され、空いた隙間へ柔軟に入り込む。
舌の上にモッタリ乗って、やがてトロンと広がる。
ハッキリした甘さにはキレがあり、後味もサッパリと潔い。

やがて成す総べなく揉みくちゃにされ、餅が奥歯で弾み始める。
当初は衝撃を受け止めた餅も、やがて成す総べなく伸されてゆく。
そして餅は徐々に薄くなり、次第に細切れに変わる。
粘り気も伸びも十分に備え、噛み続けると米の風味が爆発する。
その中でしきりに、硬く丸い食感が存在感を発揮する。
淡い味わいの中で、青味を伴った土の香りが強烈に漂う。

やがて、餅の粘りと餡子の粘りが混ざり、口の中を密閉する。
空気の流れが断たれ、さながら水中に似た閉塞感が、口一杯に広がりだす。
本能で空気を欲する脳には、溺れる様な緊迫感が奔る。
咄嗟に口を開けて素早く換気を終え、更なる咀嚼に勤しむ。
餡子はトロトロ流れ、餅を連れ去りながら、ツルツル喉を通り過ぎる。
後には鼻腔を満たす米の香りと、舌先を掠める澄んだ甘さが漂う。



越後家
東京都台東区西浅草3-14-8
7:00~15:00
月曜 定休
出口Bに出て、浅草ビューホテル脇の道を入る。その先にある二つ目の十字路の一軒手前。

亀屋【経堂@小田急小田原線】

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豆大福(つぶあん):100円


経堂『亀屋』の「豆大福」が、ビニールに中で白くけぶっている。
細かい片栗粉が吹雪いて「豆大福」を取り巻く。
その中で「豆大福」は低い姿勢で佇んでいる。
まるで吹雪が通り過ぎるのを、じっと耐えて待つ姿の様だ。
餅の表面には幾つも豆が突き出て、霞の中でぼんやり浮かぶ。

手に取ると、柔らかいビニールの向こう側で餅がへこむ。
柔らかい質感が伝わり、指先を優しく覆う。
その間でビニールと片栗粉が滑り、「豆大福」が奔放に動く。
裏返して『亀屋』と記された緑色の封を解く。
ビニールは透明の花弁となり、ゆっくり咲き始める。

白い霞から現れた「豆大福」は、大きさ約60㎜。
表面がなだらかにうねり、全体に起伏に満ちた佇まいだ。
餅は裾では薄く黄味掛かった色味を湛えている。
ぞれがしなやかに伸され、ゆったり「豆大福」を形作る。
薄くなった餅に、中に潜んだ餡子の色が淡く透ける。

少し灰色が差した餅の中で、豆も鮮明に姿を晒す。
薄く伸された餅の中では隠れ様も無い。
表面に浮き出た豆達は「豆大福」で、丸い突起になる。
一方で、餅の中に潜んだ豆達も、欠かさずしっかり主張する。
突っ張った餅は擦りガラスの質感で、豆が放つ赤紫色の影を映す。

そして、それら全ての上を片栗粉が覆い尽くす。
強固な白で「豆大福」の至る所を塗り込める。
吹雪を閉じ込めた様な、荒々しい軌跡が刻まれる。
裾に貼り付いた片栗粉が、頂部へ向かって氷壁を作り上げる。
雪原を彷彿させる餅の表面に、幾筋も風紋が走る。
打ち付る片栗粉が貼り付き、豆を樹氷に変える。

餅のハリは強く、摘まんだ指先を跳ね返す。
空廻る指の腹では、片栗粉がキュッと鳴く。
指先を「豆大福」へ押し込んで、摘まみ上げる。
餅を越えて「豆大福」全体が歪み、一斉に片栗粉が崩落した。
柔らかくたわんだ餅の先で、硬く詰まる餡子の核を捕らえる。
そんな身持ちの良い「豆大福」に、真っ向から喰らい付く。

豆大福」の表面で、餅がゆっくり沈む。
強固なハリが、圧し掛かる唇を弾き返す。
片栗粉の滑らかな感触が、唇と餅の接近を阻む。
ならばと歯を立てて、「豆大福」を押さえ込む。
突き立てられた前歯が食い込み、餅が切り裂かれる。
強い弾力の果てに噛み千切られた「豆大福」が、口の中へ収まる。
噛み口からは濃密なアズキの香りが漏れ出す。

舌の上では、降り積もった片栗粉が、周囲の水気を吸い込む。
整えられた舞台の上に餅が躍り出る。
口の中で弾む餅が縦横無尽に歯の間を行き交う。
強い抵抗で伸び、爆発するように千切れ、密やかに縮む。
ソレを何度も繰り返すと、食感に次第に変化が生まれる。
やがてソコに米の存在が、穏やかに顔を出し始めるのだ。

舌が動くと餅がうねり、中から餡子がユルリと現れる。
顎を動かして餅を噛むと、中では豆が潰れて歯応えを生む。
豆はお馴染みの赤エンドウ豆。
柔らかく仕上がって、クシクシと潰れると、ふんわり塩気を放つ。
塩気の後に着いて漂うのは、豆に詰まった素朴な甘さだ。
植物的な青味を纏って、鼻腔まで一気に上昇する。

そして餡子は餅に絡まり、弾力の中に粘りを芽吹かせる。
柔らかいが強い粘り気もあり、餅や舌や歯に良く絡む。
その粘りに組み敷かれた舌がもがく度、餡子は隙間へと入り込む。
アズキの香りは濃厚に充満し、甘さは密やかに舌を振るわせる。
ソコにアズキの甘さが見えると、思わず口の中は嬉しい混乱に陥る。

餅が粘りを発揮する中で、豆の硬さが効果を発揮する。
モチモチと続く噛み心地の中で、プチッと異質な感触が加わる。
その食感が変拍子となり、プログレッシブなリズムを奏でるのだ。

そのリズムの上を、餡子の甘さが響き、アズキの香りが乗る。
豆の塩気は閃光の様に煌めき、味の流れに表情をもたらす。
そして“つぶあん”という特性が、舌へ刺激を加える。
やがて「豆大福」は、緩やかな波動に変わる。
舌の上をアズキの皮が、サラサラと掻いて駆け抜けてゆく。
その後を追う様に粘りきった餅が、細く伸びて口の中を横切る。
そして残響の様な後味が、舌や鼻腔に漂い続ける。

美味しさ、幸せ、みんないっぱい亀屋のお菓子。
その信念の元、創業昭和13年の老舗が作る「豆大福」である。
伝統の中に“美”が生まれる。
老舗が作る御菓子でも良くある事なのです。




亀屋
東京都世田谷区宮坂3-12-2
10:00~20:00
水曜 定休
北口に出て、経堂すずらん通りへ入った直ぐ。