首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

京あづま【麻布十番@東京メトロ南北線線 都営地下鉄大江戸線】

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大福(つぶあん):140円

「京あづま」の店頭表示で「大福」と名乗るこのあからさまに「豆大福」なヤツは、
全長約55㎜のいわゆる巻いてある「豆大福」の系譜ではあるがその造りは、
“巻く”というには大雑把で、
“包む”というには密閉度が低く、
“覆う”というには隙が多い。
長方形の“豆餅”と棒状の粒餡が作り上げたその形状を一方向から眺めて端的に表現すれば、
アルファベットの“U”でありその中央部分に粒餡が収まったモノであり筒状にはなっていない。
いわば“豆餅”を布団にして横になっている粒餡が売られているという事である。
その布団も大きな黒い水玉模様というオシャレなモノであり、
なおかつ表面にはキラキラと光沢を放つ片栗粉の布団カバーまで掛かっているのである。
しかしそのベールは薄すぎて餅の粘着力を回避しきれない箇所をいくつか造り上げ、
持ち帰りの箱に敷いたパラフィン紙にペッタリと貼り付いてしまう事態が生じる場合もある。
そんな時に不用意に「大福」を引きはがそうとすると柔らかな餅は容赦なく変容を遂げ、
両端の開口部から内包されている粒餡がボタボタと外へ零れ落ちてしまうのである。
そんな失敗を経験した上で学んだ取扱い方法を駆使して改めて手に取った「大福」は大変柔らかく、
ペコッとへこみをこしらえて指先を優しく受け止める。
その柔らかさの中に芯のようなハリを保持していてソレ以上の変容を阻止して、
その特殊な形状の維持につとめている。
そして既に開口部から顔を覗かせている粒餡は瑞々しい光沢を放ち、
その濃い赤紫色を白い餅とのコントラストの中で誇示している様を眺めた後、
さっそく手にしたこの変形「大福」に開口部から齧り付く。

パクリと噛みついた所にあった粒餡はその圧力から逃れるために開口部方面へ移動を始める。
密閉された空間とは異なり粒餡は簡単にその難を逃れていったので、
結果的にその部分には2枚重ねになった“豆餅”と逃げ遅れた僅かな粒餡だけとなる。
そして2枚重ねになった“豆餅”は当然の如く強靭な弾力を発揮して、
噛み千切ろうと必死な前歯に真っ向から抵抗を示すのである。
その抵抗を退けた挙句にザクリと“豆餅”の分断に成功した後、
眺めてみる噛み口には開口部とは当然異なる瑞々しい潤いが光沢となり発露している。
厚みはさほどでもないのにそのコシは思いの外に強靭で、
少しばかり引っ張って見てもシッカリと伸びて挙句に簡単には千切れないという結束力を発揮して、
その上しばらく噛み続けても失われない弾力の中に仄かな米の風味と甘さを漂わせる。

一方で口内に入った「大福」からは開口部に集まっっていた粒餡によって、
隔てるモノが一切ないダイレクトなアズキの風味が漂い広がっていく。
甘さ控えめでアズキの風味満載の粒餡は滑らかな舌触りで加えて粘度もシッカリあるが、
やがて口内の水気を受けてサラリとした感触へと変化して次々に餅に絡まって行き、
最後には餅と同化して最後はその豊かなアズキの風味を残していく。
その風味に促される様に始まった咀嚼行動の中で餅は相変わらす強靭なコシを発揮して、
餅の中に仕込まれた赤エンドウ豆は控えめな歯応えでソレに追従をする。
プチッと噛み潰れる位柔らかく仕上げられた赤エンドウ豆からは、
強めの塩気と濃厚な風味が発せられ口内に明確なアクセントを与えるが、
その餅に引けを取らない程に種皮もそして子葉部分も柔らかな食感も中々新鮮である。
やがて咀嚼の果てに餅と赤エンドウ豆の両者を取り巻く粒餡による豊かな風味と甘さを受けて、
見事な融合を遂げてやがてスルリと喉を通り過ぎて行くのであった。
そんな随所に斬新な側面を垣間見せる「京あづま」の「大福」に潜んだ数々の“試み”を体感しつつ、
強か指に貼り付いた餅を舐め取りつつ慎重に4個めの「大福」の引き剥がし作業を開始するのであった。




京あづま
東京都港区麻布十番2-9-5
10:00~19:00
無休
4番出口から出て左手のパティオ通りを進んだ先。パティオ十番の左斜向かい。