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首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

御菓子司 紅谷【都電雑司ヶ谷@都電荒川線】

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豆大福(つぶあん):144円


雑司ヶ谷『御菓子司 紅谷』の「豆大福」は大きさ約60㎜で、
透明のビニール袋に入れられて菓子棚の上に並んでいた。
そのビニール袋から出してみると結構イビツな姿で、
表面の至る所にデコボコと窪みをこしらえている。
大きく窪んだ個所などは職人が手を加えた行程が感じられ、
本阿弥光悦の茶碗を連想させる手作りの温かみを湛える。
表面に塗された片栗粉はそれこそ釉薬の様に貼り付き、
斑点の様なムラは「豆大福」全体を覆い白い模様を描いている。
月白の餅は所々に内部に潜めた餡子が浮かべる影を映し、
ひたむきに起伏に富んだ姿の維持を続けている。
その餅にふんだんに埋もれる赤エンドウ豆は、
かなりの数が表面部分に突出していて、
タダでさえ荒々しいフォルムにインパクトを与えている。

「豆大福」全体に表れたデコボコに指を合せヒョイと摘まんでみる。
餅に食い込んだ指先にペタッと腰掛ける様に乗っかり、
指をシットリ包み込みながらジワジワ荷重を掛けて来る。
柔らかい感触の餅はユルユル流れる様に指の表面を移動するが、
直ぐに持ち前のコシを発揮して僅かに沈下しただけに留まる。
そしてそのままグッと少々イビツな姿を維持しながら、
僅かな片栗粉の剥落も無いまま基本姿勢を保ち続けている。

そのまま口に中へ半分ばかしムギュッと押し込むと、
口一杯に納まった内側から赤エンドウ豆の丸い感触が伝わる。
そこから顎を閉めて「豆大福」の分断を始めると、
餅の柔らかな食感が前歯を包み込む。
立ちはだかる餅をそのまま押し込んで力を込めると、
一瞬弾力を発揮して餅はサクリと切り裂かれる。
途端にアズキの濃厚な香りが鼻っ面を包み込む。
香りの軌跡を辿るとその先には手に残った「豆大福」の半身がある。
噛み口を見ると餅はそこまで厚くは無いが、
シッカリとしたハリもあり水気も十分に湛えている。
餡子の影響を受けていない本来の餅は、
少々黄味掛かった色合いで餡子を均等に包んでいる。
その餡子は浅い色合いの粒餡で水気は少ない。
しっかり締まった仕上がりで密度が高く、
アズキの皮が細かく結晶の様に輝いている。

意表を突く外部からの芳香に驚きつつモグモグ動かす口の中では、
赤エンドウ豆がしきりに頬の内側をゴリゴリ擦り上げている。
それと同時に口の内圧に押され噛み口からアズキの風味が、
遅れを取り戻すかの様に爆発的に広がり充満してゆく。
そこに押し出される形でドッシリ重たい餡子が舌に乗り、
上品で締まった甘さを発揮して口の中へ広がり始める。
豊かなアズキの風味の中にサッパリした甘さで、
ホロホロ崩れる様な脆さがありながら粘り気もある。
おまけにしっかりアズキの粒が残っているが、
柔らかいので直ぐに潰れて伸びていく。
風味は上品に統一されているが口当たりは千変万化の餡子である。

一方すっかり餡子を押し出された餅はそのまま甘さを纏い、
柔らかく変容して弾力と共に粘りも発揮し始める。
その中で赤エンドウ豆が次々に噛み潰され、
甘さの海へ赤エンドウ豆の素朴な風味を放出し始める。
赤エンドウ豆の素材そのものが持つ甘さと塩気が、
餡子の強化さながらも切れの良い甘さを引き立てる。
おまけに餅に仕込まれた赤エンドウ豆は大量なので、
それが長い間に渡り口の中で繰り広げられる。
ひとしきり堪能したら口の中は甘さと柔らかさが拮抗した空間である。
頃合いを見計らってゴクリと飲み込むと、
口の中には仄かな餡子の甘さが漂い、
鼻腔へ上ったアズキの風味を外へと押し出す。

大正13年創業の老舗和菓子店がこしらえる、
少々イビツな「豆大福」は見た目の割にとても上品な口当たりで、
それに加えて作り手に温もりも頂けるというオマケつきである。
ビニールに入れられているし片栗粉もシッカリ貼り付いているので、
寺社仏閣巡りの際には散策のお供としても有用である。



御菓子司 紅谷
東京都豊島区南池袋2-11-4
8:30~18:30
日曜 定休 ※お盆、お彼岸は営業
出入口1側へ出て真っ直ぐ池袋方面へ進み、東通り途中にある蓮光院の墓地を過ぎる手前の右折路の先。