首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

もち吉 東京銀座本店【東銀座@東京メトロ日比谷線 都営地下鉄浅草線】

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黒豆大福(こしあん):129円


銀座『もち吉 東京銀座本店』の「黒豆大福」は、
ひとつずつ丈夫でシッカリした袋に入れら店頭に並んでいる。
外見的には圧倒的に観光地で売られている日持ちするお土産菓子である。
加えて袋の模様で中の様子が見えにくいので、
現在袋の中がどういった状態なのか判断が付かないという状況である。
なので先ずは袋を慎重にバリッと開け放って、
滑りの良い袋の中に納まった「黒豆大福」を取り出してみる。

大きさは約58㎜の円形で気持ち平べったい姿は蜜柑を連想させる。
指先にザラリとした感触を生むかなり粒感が高い片栗粉が、
指と「黒豆大福」の間でコロコロ転がる。
片栗粉は吹き付けた様に全体を万遍なく覆っていて、
ガラス窓に貼り付いた霜の様である。

餅自体もハリが強くシッカリとした弾力もあり、
指で摘まむと袋から出たままの姿を中空で維持し続けている。
そんな指の間で安定姿勢を維持する根源の餅は、
少々黄色味を帯びていて同時に冷えた透明感も湛えている。

その一方で「黒豆大福」の主要素である黒豆は、
餅の中に深く沈み込んでボンヤリ影を浮かべポツリポツリ点在している。
確かに赤エンドウ豆にしては大きな影だが主張的には控え目で、
その下に更に浮かんだ餡子が造り出す薄らした霞の様な影と交じり合う。
白い片栗粉の細かい斑点に加え黒豆と餡子の淡い影が、
黄色味がかった餅とのコントラストで大理石の風合を醸し出す。
そんな造りモノがかった「黒豆大福」に先ずは一口齧り付く。

圧倒的存在感を示す餅はさすが餅菓子屋といった所。
上下の歯が交差するまでシッカリ包み込み、
やがて噛み千切られてもそのまま上面と底面が圧着して、
あっと言う間に噛み口を塞いで中の餡子を覆い隠す。
餅はぶ厚く細かな光沢を発する水分の保有もある。
ハリとコシが豊富で噛み締める顎を押し返す弾力も確かで、
粘りは少ないが啄んで伸せばグイーッと伸びる結束力の高さを発揮する。

餅の能力を存分に堪能する傍らで、
僅かな間に漏れ出た餡子の甘さが口の中を流れる。
その根源を確かめようと口に納まった半身を噛み始める。
依然発揮される餅の強靭な弾力は図らずも中の餡子を押し出す結果となり、
噛み口の隙間から餡子がニュルリとはみ出て来る。
本来硬めに仕上げられた餡子は水気の少ない漉し餡である。
舌の上にドシリと乗っかると一斉に塩気を広げ味覚を支配し、
続いて押し潰して伸してやるとアズキの風味が発散され漂い始める。
そして餡子からは優しい甘さがジワリと滲み出し浸透する。

その際に柔らかくなった餡子は周囲の水分とシッカリ融合をして、
舌の上に乗った時点でトロトロ柔らかな質感へ変わる。
柔らかくなった餡子はかなり柔らかくなった餅と絡まり、
やはり水分を吸収してユルユルになり柔らかさが増してゆく。

その柔らかな競演の中で一人気を吐いている硬く丸い存在が表れると、
その目印を起点にして更に「黒豆大福」をグニグニ噛み続けて行く。
黒豆特有の風味と濃厚な甘さが全体的に控え目な甘さの中で主張を始め、
硬めありながら角張った所の無い独特の食感が柔らかな世界で個性を放つ。
「黒豆大福」として当然のアクセントを発揮して全体を引き締める存在感。
そして何より驚いたのは食べ進める先に頻繁に顔を出す、
外見からの印象よりも圧倒的に多い黒豆の量である。

意外な物量戦に持ち込まれながらもコレを次々撃破して行けば、
やがて餅はフルフルになり、
餡子は更にユルユルになり、
そして黒豆は粉々に砕けて、
一纏まりで胃の中へ落ちる。

見た目以上に素材同士の絡み合い鬩ぎ合いが秀逸な一品であり、
お土産屋さん然とした店構えに油断していると足元を掬われるだろう。
袋から出した途端に柔らかさが後退し直ぐに硬くなる餅に包まれた、
活きが良いにも程がある「黒豆大福」との出会いは、
何気なく買い求めた人々に意外な驚きを与えてくれるだろう。




もち吉 東京銀座本店
東京都中央区築地1-13-14
9:00~19:00 
元旦のみ定休
5番出口から晴海通りを築地方面に向い万年橋の先。