首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

和菓子の店 ながしま【押上@京成押上線 東武スカイツリーライン 都営地下鉄浅草線 東京メトロ半蔵門線】

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豆大福(つぶあん):110円


直径約70㎜と大きな押上「ながしま」の「豆大福」は、
ほぼ丸に近く平べったい形をしている。
造形は表面が全体的にデコボコと波打っていて少しばかりイビツであり、
一見すると一級河川の河原にある丸く平たい石の様である。
とはいえその「豆大福」にしては“剛”の印象が強くなるのは、
表面に貼り付いている片栗粉の姿にも大きく影響されているだろう。
「ながしま」の「豆大福」全体を覆う片栗粉は全体に厚く塗されているが、
所々で剥落が生じていてそこから餅や赤エンドウ豆が顔を覘かせている。
一方の厚く塗された部分は片栗粉が塊のまま、
至る所で浮き上がったり反り返ったりして幾つも毛羽立ちを作る。

片栗粉の白い斑の下は紫水晶色の餅で覆われている。
餅の表面でも赤エンドウ豆の局所的な際立ったコントラストと、
内部の餡子が透けて浮かんだ淡く朧に浮かんだ影が映り模様を描いている。
出っ張った赤エンドウ豆にはタップリ片栗粉が積もり、
埋もれた豆は焦げ茶色の姿をポッカリ浮かべている。
手に取ってみると餅はハリがあって弾力が強く、
硬い所に置いた時にトンッと乾いた音を発する程である。
指先を弾き返す様な反発力と保ったまま少し窪んで、
そのまま平べったい「ながしま」の「豆大福」としての姿を維持し続ける。

一口齧り付いてみると餅特有の粘着力は控え目で、
上下の前歯でブチブチ音を発てて次々に噛み千切られる。
口の中に押し込まれた餅の表面からは硬い豆の質感が、
餅の向こうからもシッカリ伝わり頬の裏側を刺激する。
いわゆる餅的な“伸びる”という行為は想定外の様で、
引っ張ると僅かに伸びるが直ぐに噛み口からどんどん裂けて、
スクッと潔く二つに分断されてしまう。

その間ボロボロ剥がれて胸元に降り積もる片栗粉は思った通り大量である。
当然口に入った片栗粉も大量であり、
口の中で「豆大福」をコロコロ舌で転がせる程である。
食べ始めると片栗粉の粉っぽさの奥に強力な弾力があり、
押し潰すと押し返してくる反発力が見事である。
餅は不均一な厚みで餡子を包み込んでいて、
塗装された壁のように隙が無くキメ細かで密度が高い。
潤いが発する光沢は微粒子状で断面に貼り付いて、
それが一塊となってヌメリとした質感を発している。
ホンノリと塩気が漂うが総じて自然な味わいで、
強い噛み心地を堪能していると米の風味が舌に流れて来る。

一方で押し出された餡子はたちまち甘さと発散して、
アズキの濃厚な風味を充満させて行く。
明るい赤紫色で水気が少ない粒餡は密度が高く粘り気も達者で、
モッタリ重たい口当たりはかなりの食べ応えを実現させる。
アズキの種皮も子葉も滑らかな上に、
甘さの中にキリッと光るシッカリした塩気が、
濃厚なアズキの風味を更に強調させている。

同時にニュルリと口の中にあるありとあらゆる隙間へ入り込み、
水分を吸収して柔らかくなりはじめる。
そのまま餡子と餅は立ち位置を入れ替えて、
口の中で「豆大福」から俗にいう「あんころ餅」へと姿を変える。
餡子に絡まれた餅は暫くの間片栗粉に守られて自慢の弾力を維持していたが、
それに耐えられない赤エンドウ豆が餅の中で次々に砕ける。
ゴリゴリ確かな歯応えで噛み潰される赤エンドウ豆からは、
優しくまろやかな赤エンドウ豆の風味が漂いだす。
それが口の中に充満するアズキの風味に一筋のアクセントを加える。

やがて片栗粉も餡子と同化をして消えて行くと、
餅は水気に晒されながらユルリと餡子に包まれてしまう。
そして水気を得た餅は柔らかさを発揮して餡子と同調し始め、
やがては喉を通り過ぎて胃の腑へと落ちて行く。

天に届く程に高くて白い塔が建つ町にある、
地に近づかんと平たい姿をしたやはり白い「豆大福」は、
幾多の困難を乗り越えてきた東京の下町の歴史を濃縮した様な、
自身の姿を何時までもシッカリ保った強くて濃い菓子でした。


和菓子の店 ながしま
東京都墨田区文花1-1-5
7:30~19:00 
火曜 定休
A1出口から直進。押上駅前交番東の信号を渡り、左へ折れた先にある右折路へ入り更に直進。その先の十間橋通りに掛かる信号を渡った先。

ふるや古賀音庵 幡ヶ谷本店【幡ヶ谷@京王新線】

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塩豆大福(こしあん):180円


幡ヶ谷『ふるや古賀音庵 幡ヶ谷本店』に並ぶ「塩豆大福」は、
約50㎜の大きさで透明の四角い菓子ケースに入れら売られている。

半球体に形作られた表面にビッシリ分厚く片栗粉が貼り付く様は、
剥きかけのゆで卵か白銀のスケイルアーマーを連想させる。
なのでその下にある餅は無数の白い小片に阻まれて、
隙間から僅かに覘く程度にしか確認する事ができない。
その僅かな隙間から伺える餅は少し濃い藍白色を発し、
染み出て来そうな水気を湛えた透明感を保持しているのが確認できる。
その餅と片栗粉の間には丸々とした風貌の赤エンドウ豆が、
餅の上に腰掛けているかの様に其処彼処で外に姿を晒している。
当然餅の中にも赤エンドウ豆は入っていて至る所で小山を作るが、
何しろ分厚い片栗粉のおかげでシッカリ確認が出来ない状態である。
僅かに見える餅に黒い影が浮かぶ箇所もあるが、
それが赤エンドウ豆か餡子かのか判断が難しいい状況下にあるのだ。

先ずはケースの蓋を開ける。
それだけで「塩豆大福」の表面は震え、
表面の片栗粉を剥落させる。
さらにそこから摘まみ上げようとするが、
ケース内にピッタリ収まった「塩豆大福」の周囲に、
指が差せ込める様な大きな隙間が見当らない。
なので半ば強引に指を食い込ませて吊り上げ、
「塩豆大福」をケースから引っ張り出す。
指先にはガサガサと流動する片栗粉と共に、
水風船を彷彿させる驚異の柔らかさを発揮する餅の感触が伝わる。
それは正しくコシやハリを超えた“弾む”指触りで、
とても固体とは思えない質感を湛えている。
しかしだからと言ってコシやハリが無い訳ではなく、
摘まんだ指先シットリ包み込むとそこからは一切の型崩れは無い。
そこから指の腹にシッカリ吸い付いて佇む「塩豆大福」を眼前へ置き、
摘まみ上げた時から終始剥落が止まない横っ腹へ静かに齧り付く。

唇で挟んだ途端に胸元へ片栗粉がバラバラ落ちて積もって行く。
そしてフルフル柔らかい感触が押し当てられるが、
あっと言う間に押し潰されて「塩豆大福」は次第にくびれ始める。
餅自体のハリは「塩豆大福」を守りきる程ではないので、
そのまま唇だけで難なく中身ごと両断される。
歯を立てる暇も無い位あっと言う間に分断された「塩豆大福」は、
柔らかい食感を発揮しながら流れる様に口の中へ納まる。
片栗粉と餅の滑らかな感触とその中身あるコロコロ硬い質感が、
頬の内側で三重奏を奏でて穏やかに主張を始める。
噛み口を見ると餅の質感は当にガラス細工の様で、
断面全体をヌメッとしたたり落ちそうな潤いが覆う。
フルフル震えて粘りに裏付けられた伸びは強固で、
餅全体がグッと伸びて餅全体でプチンと千切れるのだ。

一方で噛み口から零れ出た餡子は至る所に付着して、
そこから撒き散らされたアズキの風味が一瞬で世界を塗り替える。
芯の通った甘さを湛えた漉し餡は水気が少ない締まった食感で、
舌の上のコロンと出て来てそこで水気を吸い上げる。
やがてネットリ柔らくなる餡子から染み出す切れの良い甘さと、
立ち込めるアズキの豊かな香りに触発されて「塩豆大福」の咀嚼を始める。
ムチムチとボリュームを湛えた餅は震える様に潰れ、
そのまま中に仕込まれていた餡子に溶け込み瞬く間に一体化を成す。
餅に取り込まれていた赤エンドウ豆もそのまま引きずり込まれ、
繰り返される咀嚼の中で次々噛み潰されててゆく。
硬めの歯応えだが噛み潰せば直ぐにグニグニ粘りを持った食感になって、
仄かな苦みを含んだコクと豆本来の甘さが塩気を纏って広がる。
やがて細かく砕けた赤エンドウ豆は再び餅に絡め取られて、
そのまま餅と餡子の織り成す空間へ消えて行く。
その後はひたすら漉し餡のネットリした口当たりと、
モッタリ重たい食感が発揮される餡子主体の空間になる。
餅の柔らかさは継続的に発揮されるが、
徐々に水気を得てヒタヒタ舌を撫でる独特な感触へ変わる。
そして十分な水気を吸収してタプタプと口の中に満ちて、
遂には液体まであと一歩という状態までに至り、
やがてはゆっくりと飲み込まれて行くのだった。

とはいえここに至るまでそこまで噛んだ覚えは無く、
突き詰めれば含まれた赤エンドウ豆の数と同程度の範疇だろう。
つまり硬いから噛み砕くという自然の摂理以上の事が起こらない、
挙動が少ない静かな食べ心地がこの「塩豆大福」の真骨頂ではなかろうか。
そんな事を胸の片栗粉を払いながら思うのだった。



ふるや古賀音庵 幡ヶ谷本店
東京都渋谷区幡ヶ谷3-2-4
9:00~18:00
元日 定休
北口を出て甲州街道を左へ進む。左手に現れる六号通り商店街へ入り後はひたすら直進。

梅花亭 神楽坂本店【神楽坂@東京メトロ東西線】

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豆大福(つぶあん こしあん):220円


神楽坂『梅花亭』の「豆大福」は“つぶあん”と“こしあん”の2種類が、
約58㎜の大きさで柔らかいビニールにしっかり包まれ売られている。
それは腸詰の皮的な役割を担って店頭に積んで置ける位の強度を生み、
開け放った後の「豆大福」を少しばかり四角に成形する。
全体的にふっくら柔らかく膨らんだ角の取れたドーム型は、
野球のベースが二枚積み重なった姿を想像してもらえば近い筈である。

そして「豆大福」の表面に塗された片栗粉もまたシッカリしていて、
全体を見れば疎らなのだが塗り残しは無く餅を覆っている。
特に分厚く塗された箇所は結霜ガラスを彷彿させ、
そこがキラキラ反射すると表層がにわかに立体感を湛え始める。
不意に見る者を幻惑させる片栗粉の下では赤エンドウ豆が、
ゆったりと散ってモノトーンの世界を描き出す。
表層に近いモノは際立つ黒さの上に片栗粉を頂き、
深層に潜むモノは微かに青味を帯びた影を浮かべている。
その赤エンドウ豆達が泳ぐ餅の海は水晶みたいな透明感で、
霞色を湛えたキメ細やかな生地を滑らかに広げて餡子を覆っている。

摘まんでみると指先では片栗粉がククッと鳴り、
強い弾力を放つ餅は壁となって外圧に真っ向から立ち向かう。
果敢に指を押し返す餅に対抗して更に指先を食い込ませるが、
「豆大福」の形は僅かに揺るいだだけで直ぐに持ち直してゆく。
結局は指の間では大きな変化を見せないまま中空へと上がり、
シックリ重たい感触を指先に乗せて安定して見せるのだった。

先ずはその横っ面目掛け齧り付くと、
餅から発せられる圧倒的な弾力の前に思わず進行が滞る。
加えて唇に貼り付いたサラサラの片栗粉によって、
餅を捕らえ切れないまま齧り付いた力場を拡散させる。
ならばと今度は「豆大福」の表面に歯を立てて、
しっかり餅に食い込ませてから押し付けてみる。
ブリブリと力強い感触が両顎全体に響き、
そのままその弾力が緩衝材の役割を担い又も立ちはだかる。
しかし歯の先に集中した力は餅を押し退けながら、
抵抗を示す餅ごと突き進み「豆大福」の中心部へ沈降する。
やがてズンと鈍い衝突の後に餅は沈降が止まると、
次に前歯が餅の表面を切り裂き始める。
そしてブツブツ重い衝撃を随所で起こして、
遂に断裁され餅はゴロンと口の中へ収まるのだった。

既に口に中には餡子の風味で満ち始めている。
その芳香に促される様に口をモグモグ動かして咀嚼を始めるが、
今まで圧倒的だった弾力が忽然と失われる訳は無い。
噛み口を見ると厚みもたっぷりあって、
ギュッと締まった質感を放ち餡子を均等に覆っている。
半身になった今も強靭な食感を発揮するその表面に、
咀嚼と呼ぶには余りに脆弱な挙動を始める。
これでは“噛む”というよりは“揉む”近いが、
やがてソレが内部にあった餡子を押し出し始める。

駆り出された餡子は口の中で水気を得て、
徐々にその能力を開放し始める。
粒餡はモッタリ重い口当たりで水気自体は少ないが、
素朴で濃い甘さを秘めていてそれがネットリした感触で餅に絡まる。
皮の歯応えを残しながらも舌触りはなめらかで、
クニクニ滑る様な食感を奥歯の間で発揮する。
一方の漉し餡もまた密度の高いシッカリした口当たりである。
本来は水気も少なくモロモロ零れる位に硬めの仕上がりだが、
ネットリ緩やかで粘度も高く至る所に貼り付いて来る。
甘さは抑え目で何処までも上品でアズキの風味も優しく、
水気を得た後でもスーッと舌の上を漂い口の中を優しく流れる。

一方体積が減った「豆大福」は今や袋状の豆餅みたいなモノである。
すかさず中の赤エンドウ豆諸共噛み潰すと餅はグングン弾み、
中ではその衝撃を真っ向から浴びた赤エンドウ豆がグシグシ潰れて行く。
赤エンドウ豆は種皮は硬めだが中は柔らかく、
確かな塩気と豆自体の豊かな甘さを備え持っている。
大地が凝縮した濃厚な風味を発散したら、
たちまち周りを取り囲む素材と融合を果たし始める。
赤エンドウ豆から発するクセのある風味を取り込んだ餅は、
ソレと共に吸収した水気ですっかり柔らかい感触に変わる。

周りで絡まる餡子の甘さが赤エンドウ豆の甘さに混ざり、
明確なコントラストを発生させて彩りを与える。
結局終ぞ弾力を失わなかった餅は柔らかく伸されて喉え流れ、
甘い海に揺蕩う白鯨の様な圧倒的存在感を保ったまま、
胃袋という名の深海へと落ちて行くのだった。




梅花亭 神楽坂本店
東京都新宿区神楽坂6-15
10:00〜20:00
不定休
神楽坂口に出て早稲田通りを左へ進んだ先。