首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

川忠本店【京成高砂@京成本線 京成金町線 京成成田空港線 北総鉄道北総線】

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豆大福(つぶあん):120円


京成高砂『川忠本店』の「豆大福」は大きさは約54㎜で、
こんもり盛り上がった標準体型をしている。
全体を覆う片栗粉はしっかり塗されていて、
その表面には其処彼処に細かい凹凸が出来ている。
複雑な地形は白い大地に影を生み出し、
更なる立体感を造り上げている。

その白にスッポリ覆われた赤エンドウ豆は、
僅かに黒い地肌を浮かび上がらせるのが精一杯の様子である。
その代わりすっかり白く染まった丸い姿を、
「豆大福」の表面に点々と突出させ自己の存在を誇示している。
そしてその全てを支える餅は白と月白の入り混じる中に、
霞を含んだような模様を羽織ってシンと佇む。
それは餅の厚みか餡子の透けた姿か想像は出来ないが、
砂糖掛けされた様な白が司る空間に層の様なモノを描き出している。

指で摘まんでみると餅は強いハリを発揮して、
食い込もうとする指先を直ぐに押し返し始める。
指と餅の間で片栗粉がサラサラ所在なさ気に移動を始め、
やがて押し出されて指の周りをグルリと取り囲む。
餅が保持するハリは少しばかり強く押しても、
「豆大福」全体を脅かす事無く状態を維持し続け、
当初の楕円体を損なうことなく指の間に浮かび続ける。

そのまま引き寄せパクリと一口齧り付くと、
「豆大福」はフニャッと形を変えて両前歯を迎える。
包み込む様に沈み込みどんどん楕円体は括れ始め、
中心にある柔らかなモノを掻き分けて進み続ける。
やがてバウンと衝突した柔らかい衝撃が、
上下の餅である事に気付き僅かに沈下の速度を鈍らせる。
そのままゆっくり噛み千切ろうと歯を立てるが、
餅は強い抵抗力を発揮して抗い始める。
更に力を込める為に唇で抑え込むが、
そこに貼り付いた片栗粉が足場を奪い力を分散を計る。
しかしシッカリ食い込んだ両前歯で程なく分断を開始し、
遂にブチンと両断を果たした「豆大福」がスッポリ口に納まる。

舌に密着した餅からは既に米の風味がほんのり漂い始め、
ソレを染み込ませる様に口の内圧を高めてムニムニ動かし始める。
餅の幅は表面が厚く底面が薄く、
断面には豊富な水気が水滴の様な光沢を放つ。
引っ張っても引っ張り返すような強いコシが弾む様な食感を、
キメの細かい仕上がりが滑らかな口当たりを生む。
ただコシはあるが柔らかくもあるので直ぐにフニャッと潰れて、
中からは居場所を失った餡子が現れ出る。

密度が高くモッタリと重たい舌触りの粒餡は、
アズキの豊富な風味と力強く切れの良い甘さを湛えている。
安住の地を奪われた餡子は舌の上で押し潰されネットリと伸び、
そこから近場の隙間へ次々にユルユル流れて移動を始める。
挙句にその途中で周囲の水気を吸収して行くので、
どんどん柔らかくなり細くて狭い口の奥まで難無く浸透する。

その一方でフニフニ力を加えられて次第に柔らかくなった餅は、
徐々に抵抗力を失いながら滑らかなで粘りのある口当たりに変わる。
そしてその中に潜んでいた赤エンドウ豆は餅から離れ、
奥歯に次々に潰れてはその濃厚な土の風味を放出し続ける。
豆本来の風味が活きた仕上がりで塩気は薄めだが、
その分甘栗の様な優しい甘さが口一杯に広がる。
ペシペシ潰れる種皮とモロモロ砕ける子葉の対照的な食感が、
柔らかい餅の中と外で鮮やかに発揮される。

そこに餡子が加わり餅に絡んで入り込む事で、
更に柔らかくモチモチの食感へと進化を遂げる。
ソレは米とアズキと赤エンドウ豆という三つの風味が絡み合い、
すっかり姿を変えた言うなれば“概念の豆大福”である。
きっとどこかの飲料メーカーが“豆大福ドリンク”を作るなら、
これに近似したモノを作る事になるのだろうと、
にわかに好奇心が鎌首を擡げ始めた頃にゴクリと飲み込む。

明治5年創業の老舗和菓子店が作り上げる「豆大福」ともなれば、
道を外す事の無い王道の一品になる事は間違い無いのである。
その確信を得ながらも“しるこドリンク”との差別化のカギは、
やはり米と赤エンドウ豆が握るのだろうと架空の飲料品を夢想しつつ、
更なる情報解析の為に残りの半分を口に放り込むのでした。



川忠本店
東京都葛飾区高砂3-10-6
7:30~19:00
水曜 定休(月1回水木休)
南口に出て都道307号線を渡り、高砂南町商友会のレンガ路を進む。その先の十字路を左へ折れて直ぐ。