首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

追分だんご本舗 新宿本店【新宿三丁目@都営地下鉄新宿線 東京メトロ副都心線】

f:id:tokio_daifuku:20150208222949j:plain

豆大福(つぶあん):172円


老舗「追分だんご本舗」の「豆大福」はビニール袋に入っているが、
その内側には一面ビッシリと細かい水滴で覆われていた。
なんてこったいと独りごちて目の前に映る絶望的光景を前に、
取れる手段は今となってはただ一つサッサと袋から出す事のみである。
そんな事を想いながらもゆっくりと取り出してしまうのは、
せめて少しでも餅にダメージを与えない様にというささやかな悪あがき。

そしていざ丁寧に取り出してみるとアラ不思議、
何の抵抗も無くアッサリ手の平にコロンと出て来る「豆大福」。
その表面には十分に片栗粉を纏っていささかも湿った所が無くドライに保たれており、
「豆大福」表面に数多ある赤エンドウ豆を覆っている薄くなった餅も、
水気に脅かされぬままシッカリと健在だった。

すっかり遣り過ごされた水滴をビニール袋に置き去り改めて見直す「豆大福」の、
まるで和菓子の定番“吹雪饅頭”を彷彿とさせる程の白黒のコントラストは、
察するに塗布された片栗粉の少なさから来た見栄えの良さ由来の見栄えか。
その表面に湛えたしっくりと指に馴染んでくる瑞々しい餅は、
指の腹をゆったりと受け止めて中心に座る塊との間で微かに震え、
自身のハリを最大限に発揮して「豆大福」たる事を全身全霊を以て努めている。

そんな「豆大福」に敬意を表しすす早速ムニュリと齧り付く。
食い千切った一口分を含み閉じた口中の至る所で、
ゴツゴツと赤エンドウ豆がぶつかってやおら自己主張を始める。
驚くほどアチコチに豆。
当然何回咀嚼すれば餅は細かく千切れ、
粒餡は蕩けて霧散していく。
そんな中で赤エンドウ豆はその存在感を大いに発揮する。

一口の内に驚くほど大量に内部に送り込まれて、
少しばかり咀嚼した位では全てを捌ききれない程である。
一つ噛み砕く傍から次々に現れる新手達は、
噛み潰す作業に没頭する奥歯の横辺りをグルリと取り囲み、
まるで挑発するようにコツコツと奥歯の横っ面を叩いて来る。
塩気は左程強い訳でも無くクシッと簡単に噛み砕ける豆ではあるが、
その風味は豊潤であり砕けた欠片の一つ一つから香って、
畳み掛けて咀嚼を繰り返すと種皮からは青みに満ちた風味が現れる。

ここまで赤エンドウ豆の独り舞台ではあるが、
当然ソコは老舗団子店の作り出す餅である。
噛み口を見れば滲み出てくるような水気が光沢となって表れ、
薄灰色で程々の厚みを構成するキメも細かい。
クニクニ噛めば米本来の香りがほんのりとしてくるが、
それ以上にグングン甘味が増していくのが感じ取れる。
クイッと引っ張ってみると意外に抵抗が強くてコシもあり、
中心に据えた粒餡の周りをクルリと覆い包む。

その中心に丸まっている粒餡もまた全てが控え目。
水気も程々でホロホロとした見た目に反して、
一旦口に含めばニューっと滑らかに伸びて舌に広がり、
それに伴ってサッパリとした甘さが舌の上に滞在する事ほんの一時、
その後はアッサリと立ち去って喉の奥へと旅立っていく。
後に残るのはほんのりとしたアズキの風味と、
まるで幻の様に朧な甘さの記憶だけである。

豆を存分に味わう為には餅と餡の強力な後ろ盾があってこそ。
今までも大量の赤エンドウ豆を保持した「豆大福」はあったが、
コチラ「追分だんご本舗」の「豆大福」はといえば、
餅と餡が良いレベルで甘味が拮抗していて一体となり、
その上に双方柔らかく滑らかな食感を持っている。
違いと云えば歯応え位のモノである。
それ故に赤エンドウ豆の存在はその物量を以てして確立する訳であり、
その均衡が保たれてこそ豆を主体とした「豆大福」が成立するのである。

老舗団子店の「豆大福」だからと高を括って食べると意表を突かれるが、
老舗団子店だからこそ成立出来る「豆大福」ともいえる。



追分だんご本舗 新宿本店
東京都新宿区新宿3-1-22 NSOビル1F
10:00~20:30(冬時間)
10:00~21:00(夏時間)
元旦 定休
C1出口から新宿方面へ新宿通りを進んだ直ぐの所。