首都大福東京

TOKYO METROPOLITAN DAIFUKU

首都大福東京

旬彩游菓 立花家【小川@西武拝島線】

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豆大福(つぶあん):113円


小川「旬彩游菓 立花家」の「豆大福」は約52㎜のドーム型をしていて、
パリパリのビニールに包まれ店頭に並んでいる。
表面にはキラキラ細かい輝きを放つ片栗粉が薄く塗され、
外観に描き出された濃淡は白い霜が貼り付いて造り上げる、
幾何学模様の結晶を連想させる様に餅の表面を覆う。
片栗粉の下に潜んだ乳白色の餅は細かく泡立った様な小さな凹凸が集まり、
ソレがなだらかな稜線を形成してドーム型の「豆大福」としての姿を成している。
餅の表面に出っ張った赤エンドウ豆は置き石の様に点々と佇む。
埋もれた赤エンドウ豆は滲み出た水気で餅と片栗粉を融かし、
雪化粧の小山に一瞬の雪解けをもたらす。
ビニールを解いて手に取ると小振りな割にはしっくり重たく、
指先にはゴツゴツと意外な程にしっかりした触感が伝わる。
指と餅の間では片栗粉がサラサラと滑らかに流れ、
その質感が餅の武骨さと相まって心地よい指触りとなる。
餅はハリがあって指先の圧力程度では表面を窪ませるのがやっとで、
指が離れれば窪みはたちまち元の滑らかな曲線を形成し始める。

一口齧り付いてみる。
餅が発する強靭な弾力が顎全体に衝撃を与え、
?み千切ろうとすると餅は圧縮され更に強靭なコシを発揮する。
どうにか力ずくで餅の抵抗を制圧して食い千切ると、
噛み口からは鋭く尖った甘さが口の中に爆発する様に四散し始める。
あっと言う間に甘さで支配された口の中で、
餅はまるで凱歌をあげる様にクニクニ弾み踊り出し、
あっと言う間に口の中を完全制圧されてしまったのだった。

意外に厚みを持った餅は荒めに仕上がって米の面影が合わさった所に、
至る所にある小さな気泡が相まって粒子間が強調される。
断面からは若干の黄色味も感じ透明感もあり、
タップリはらんだ水気は大粒の光沢を放ち、
「豆大福」の中心に鎮座する餡子を取り巻き輪になって輝いている。
僅かに伸びて直ぐにブチリ千切れる程にコシが強く、
長く弾力が維持されクニクニ噛み続けて行くとじわっと甘さを放つ。

中の餡子は濃い赤紫色で水気が少なく、
細切れで散らばったアズキの皮だけがヌメリと光沢を放つ。
ソレが舌に乗るとトロリ溶け出してたちまち口の中一杯に、
濃厚でいてどこか素朴な個性あふれる甘さとアズキの風味で満たす。
かなり個性的で一風変わった甘さを発揮する餡子は、
ネットリ絡まり餅を柔らかく仕立て上げる。
その中にコツコツ硬い感触が自己主張を始め、
手当たり次第に噛み潰して行くとサクサク軽い感触で砕ける。
食感は種皮に皺が生じた様にゴツゴツしていて、
一般的なツルリとした舌触りとは大きく異なる赤エンドウ豆である。
そもそもこの豆が赤エンドウマメなのか確証が持てない程、
姿形が今まで食べてきた「豆大福」とは大きく異なるのである。
とはいえ硬めに仕上がっているが歯応え自体は優しい赤エンドウ豆は、
最初に発揮する塩気の後は凪の様に静かな味わいで、
やがて豆其の物の野趣溢れる味わいが舌に広がってゆく。

口の中の甘さはその存在感を更に露わにして行く。
喉の奥までシッカリ甘さで満たされた中で、
餅の弾力は餡子を始めとした周囲の水分を得て柔らかく変容する。
強靭だったコシは舌に絡み付くまで緩やかになり、
尚且つハリは失われないまま強力は粘着力を発揮する。
やがて餡子と共に流動して行き飲み込もうとすると、
絡めた舌もろとも引きずり込もうとする。
ようやく飲み込むと舌から喉を通り食道から胃に至る全て道のりで、
ゆっくりと撫で上げられるような感触を残して行く。

創業約50年の老舗和菓子店の底力に圧倒される、
小振りな見た目に潜んだ強力な個性に満ち溢れた「豆大福」である。
郊外の静かな町で他に類を見ない魅力を発揮しているソレは、
看板商品である「カフェオレ大福」や「抹茶大福」に寄り添いながら、
それらの評判を揺るぎないものにする規範として確固たる地位にある。



旬彩游菓 立花家
東京都小平市小川西町2-27-11
9:00~20:00
火曜 定休
駅西口を出て道なりに直進して富士見通りへ出る。信号を渡り右へ折れて少し進んだ先。